送迎支援サービス広がらず 介護保険総合事業 担い手も補助金も大幅不足

2021年1月20日 07時12分

自分の車で病院へ女性を送り届けた広重静男さん(左)。「車の中での会話も楽しい」と話す=千葉県大網白里市で

 介護保険の総合事業で要支援者らの送迎サービスを行っている自治体は、全体のわずか3%にとどまっていることが、民間の調査で分かった。市民団体など担い手の不足や、補助金の少なさが要因とみられる。高齢者福祉の関係者からは「外出の足を求める高齢者は多いのに、サービスは圧倒的に不足している」と懸念の声が上がっている。 (五十住和樹)
 このサービスは「訪問型サービスD」。自治体が地域の実情に応じて提供する総合事業のうち、介護予防・生活支援サービス事業のメニューの一つだ。介護認定で要支援となった人と、心身の状態を見る「基本チェックリスト」を受けて支援が必要とされた人が介護予防や通院、買い物などの「足」に活用する。調査は二〇一九年十一月、NTTデータ経営研究所(東京)が厚生労働省の補助事業として行い、全国千七百十九の市区町村から回答があった。
 高齢者には、運動機能の維持や社会的孤立の防止などのために、外出の必要性が指摘されている。移動支援に関する政策提言や調査をしているNPO法人全国移動サービスネットワーク(同)事務局長の伊藤みどりさん(46)は「公共交通を利用することが難しい高齢者にとって、移動支援はライフライン。一層の充実を図るべきだ」と訴える。
 昨年末、千葉県大網白里市の病院に、NPO法人「大網お助け隊」の協力会員広重静男さん(75)が愛車で乗り付けた。市内の女性(81)を約五キロ離れた自宅から送り届けに来たのだ。女性は足の痛みで歩行が不安定で、つえを使っても短い距離しか歩けない。週三回のリハビリのため、自宅との往復の移動支援をお助け隊に頼んでおり、「本当に助かる。(サービスが)ないと困る」と言う。
 お助け隊は一〇年、ごみ出しや外出の付き添いなど日常生活の困り事を有償で支援する団体として発足。一六年にNPO法人化した。当初から行ってきた移動支援を、一七年四月から訪問型サービスDとして続ける。協力会員になって二年の広重さんは「自分も送ってもらう立場になるかもしれないからお互いさま。ありがとうと言われると、やりがいを感じる」と話す。
 市内にバス路線はあるが、車がないと不便。ガソリン代相当分(一キロ三十円)を払えば利用できる移動支援のニーズは年々増えている。一九年度の依頼は二千百六十一件と、前年から約四百五十件増加。現在、四十〜八十代のボランティアの男女約四十人が協力会員に登録し、各自の車で利用者を送迎している。
 ただ全国に目を向けると、お助け隊のような活動は広がっていない。「支える側も高齢ドライバーが多く、なり手が少ない。自治体の補助額が低く、運営も厳しい」と伊藤さん。お助け隊では、会員が利用者から受け取る一キロ三十円のうち十円分を会の運営費に充てているが、コーディネーターの杉本義光さん(71)は「市の補助金と合わせてぎりぎりの状態」と言う。
 訪問型サービスDは原則として要介護者と元気な高齢者は対象外。伊藤さんは「同じ地域でも使える人と使えない人が分断されているから、サービスが広がらないのでは」と指摘する。
 神奈川県秦野市は、買い物や通院などの外出を支援する担い手として「認定ドライバー養成研修」に取り組む。介護保険の一号被保険者となる六十五歳を迎えた市民に講習会のチラシを配り、参加を募っている。伊藤さんは「ニーズは高くても、それに見合うサービスを住民がつくるのは簡単ではない。自治体は人材育成を本気でやってほしい」と話す。

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