春闘経営側方針 賃上げの流れ止めるな

2021年1月21日 07時59分
 経団連が春闘に向けた経営側の方針を公表した。コロナ禍を踏まえ、賃上げに強く歯止めをかけたのが特徴だ。だが大企業が内部留保をため込む中、安易な賃上げ抑制には異論を唱えざるを得ない。
 経団連が公表した経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)は「コロナ禍で業績はまだら模様。横並びの賃上げは現実的ではない」と指摘。収益が増えた企業でも賃上げは「選択肢」との姿勢にとどめた。
 春闘における賃上げは二〇一四年から続いている。しかし今回の経営側の姿勢はその流れを止める狙いがあるとみていいだろう。
 確かにコロナ禍は一部企業の業績に悪影響を与えている。ただ大企業を取り巻く経営環境はリーマン・ショックと比較すると明らかに悪化の度合いが少ない。
 平均株価は極めて堅調であり一時バブル崩壊後の最高値を付けた。輸出関連企業に影響が大きい為替相場も安定している。
 財務省が昨年十月末に発表した法人企業統計によると、一九年度の企業の内部留保(金融・保険除く)は約四百七十五兆円と八年連続で過去最高を記録した。
 この内部留保増大に、政府・日銀の金融緩和策による財務環境の好転が寄与したことは間違いない。一方で金融緩和は預金者の金利収入を奪っている。
 こうした構図の中、大企業が賃上げに消極的な姿勢を見せることは許されないはずだ。内部留保は危機に陥ったときの準備金的な性格を持つ。今こそ取り崩して労働者の生活支援に使うべきだ。
 これまでの賃上げも、大企業は政府の強い要請を渋々受け入れ実施したにすぎない。目先の決算ばかりにとらわれ、働く人々への利益還元を怠る経営者の姿勢は看過できない。
 経労委報告では従業員の生産性をより重視する裁量労働制の拡大も求めた。だが働き方の根本を変えるための議論は、社会状況が安定しているタイミングで行うべきではないか。
 非正規労働者を中心に職を失う人々は日々激増している。中小零細企業や飲食店の倒産・廃業も後を絶たない。
 経団連は大企業で組織するが、その姿勢は全産業での労使交渉に深く影響を及ぼす。それゆえ経営側は自らの持つ公共性を改めて認識すべきである。
 同時に連合など労働側にも、今こそ踏ん張り時との意識を強く求めたい。 

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