国の責任一転否定 原発避難者訴訟 東京高裁、前橋地裁判決覆す 賠償額は増額

2021年1月21日 17時35分
 東京電力福島第一原発事故後に福島県から群馬県などに避難した住民らが国と東電に計約4億5000万円の損害賠償を求めた集団訴訟の控訴審判決で、東京高裁(足立哲裁判長)は21日、国と東電の賠償責任を認めた一審の前橋地裁判決を覆し、国の責任を認めない判断をした。東電にのみ命じた賠償額は、原告91人のうち90人に対し計約1億2000万円。一審から8000万円余り増額させた。

原発事故避難者が国と東電へ損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決を受け、「賠償額を上積み」「不当判決」と書かれた垂れ幕を掲げる弁護士ら

 全国で約30件ある集団訴訟で、高裁判決は2件目。昨年9月の仙台高裁判決は、国と東電の責任を認めており、国の責任を否定した初の高裁判断となった。
 訴訟では国が2002年に公表した地震予測「長期評価」の信頼性が争点になった。長期評価は福島県沖の地震を予測していた。

◆「防潮堤あっても事故は防げず」

 この日の判決は、長期評価の信頼性には専門家からも異論があり、津波の発生は予見できなかったとした。その上で「東電が長期評価に基づいて試算した最大15・7メートルの津波を前提に防潮堤を設置していたとしても事故は防げなかった」と指摘。津波対策に関する国の東電への対応に「問題があったとは言えない」と判断した。東電については、平穏な日常生活を送る人格的利益を侵害したとして賠償責任を認めた。
 17年3月の前橋地裁判決は、長期評価を考慮すれば、東電はその数カ月後には巨大津波を予見できたと指摘。配電盤や非常用電源の高台設置などの安全措置を取らなかった過失が、事故につながったと判断した。国は東電の自発的な津波対策が難しいと認識していたとして「規制権限に基づき対策を取らせるべきなのに怠った」と断じていた。
 一方、賠償額は増額した。避難の経緯や年齢を踏まえ、支払い済み賠償額との差額を算定。避難指示区域内にいた原告には1100万~1500万円、旧緊急時避難準備区域の原告には260万~580万円、自主避難した原告には30万~70万円の賠償を命じた。
 原告のうち一審の賠償額に不服のある住民や賠償が認められなかった住民が控訴。国と東電も控訴し、長期評価は科学的知見が不十分で津波襲来は予見できなかったとして、過失はなかったと反論していた。

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