「あまりに不当…」 怒りに震える原告側の避難者 東京高裁、原発事故で国の責任否定

2021年1月21日 20時01分
 「不当判決」。東京電力福島第一原発事故で国の責任を否定する判決が言い渡された午後2時すぎ、東京高裁前に現れた弁護団は、厳しい表情で紙を掲げた。一審判決から後退する内容に、支援者の高齢男性は「避難者の苦しみが続く。司法に正義はない」と強い口調で判決を非難した。

控訴審判決後の報告集会で涙をぬぐう原告の丹治杉江さん。左は鈴木克昌弁護団長

◆判決を分ける「長期評価」

 原発事故の避難者集団訴訟を巡っては、今回の判決までに八つの地裁・高裁が国と東電の責任を認めたが、七つの地裁は東電の責任しか認めていない。
 判決を分けているポイントは、国が2002年に出した地震予測「長期評価」の信頼性に対する判断だ。
 長期評価は、過去の津波地震を基に今後の津波地震の可能性を指摘。福島沖を含む日本海溝沿いでは、「マグニチュード8級の地震が30年以内に20%程度の確率で発生する」と警告した。長期評価を基に東電内では08年、福島第一原発を最大15・7メートルの津波が襲う可能性があると試算していたが、対策は取られなかった。
 今回の判決は、長期評価について、電力業界が工学の専門家らと策定した津波評価とも整合していなかったなどとして信頼性を否定した。

◆「原発のことを考えない日はない」

 判決後、東京都内であった集会で、原告代表の丹治杉江さん(64)は「訴えをすべて否定された思い。生きていくのが嫌になる判決だ」と涙ながらに語った。
 丹治さんは11年3月の事故当時、原発から約35キロ離れたいわき市で暮らしていた。再び事故が起きるかもしれないと不安になり、夫と車で前橋市に自主避難。避難先では当初、「車はちゃんと除染したのか」「あなたも被ばくしているんでしょう」と心無い言葉を投げかけられた。
 夫と家電修理の仕事を営みながら、中古で購入した家のローンを返す日々。10年たっても生活はままならない。「事故から10年。浮草のような暮らしが続き、原発のことを考えない日はない。あまりに不当な判決だ」と声を震わせた。
 弁護団の関夕三郎弁護士は「原発事故は命や財産を奪う。国は東電とのなれ合いで、緩みきった対応をしてきた。国の責任を司法が裁かなければ、事故は再び起き得る」と警鐘を鳴らした。(小沢慧一)

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