“朝チア!”あなたを勝手に応援しまーす! コロナ禍でも頑張る通勤者にエール

2021年1月22日 07時05分

JR新橋駅前でサラリーマンらを勝手に応援する「朝チア」を行う全日本女子チア部

 毎朝、明るい気分で出勤するサラリーマンは、どれだけいるだろうか。新型コロナ禍の今なら、なおさらだ。そんな人たちを「勝手に応援します」と、朝の駅頭でチアダンスを踊る女性たちがいる。一体どんな人で、何を目指しているのか−。
 緊急事態宣言の発令が決まる数時間前の七日午前八時すぎ、JR新橋駅前のSL広場。「おはようございまーす。いってらっしゃーい」。赤いユニホームのチアリーダー四人が声を張り上げた。
 「新型コロナの感染拡大で、いろいろなことがうまくいかなくなったり、ストレスを抱えていると思います。そんな時こそ、元気いっぱい頑張っていきましょう。応援しまーす!」
 続いて二十分ほどのチアダンスが始まった。大半のサラリーマンは、視線を一瞬向けて通り過ぎる。しかし、足を止める人も数人いる。女性会社員(48)は「やっている時はだいたい見ていく。明るい気持ちになるから」と笑顔を見せた。

全日本女子チア部のメンバーの(左から)なっつぅ、まっつん、クミッチェル、かなぶん

 駅頭でのチアダンスは、有志のグループ「全日本女子チア部☆AJO」による「朝チア」。新橋や新宿、池袋などの駅前で毎週、通勤する人たちにエールを送る。十一年前に始まり、二〇二〇年十一月には一千回に達した。
 活動は〇九年八月、既に引退した女性が一人で始めた。人間関係で会社を辞めた挫折から「ダンスの経験を生かし、何か人の役に立とう」と、朝の新宿駅前で踊るようになった。
 チア部の今の部長で、フリーアナウンサーのクミッチェルこと朝妻久実さん(37)は一〇年春、女性の朝チアを見に訪れ、その場で「参加したい」と訴えた。
 当時は地方テレビ局のアナウンサーを経て、東京でフリーに転身。しかし、オーディションに落ち続け、仕事をもらえず「どうせ自分なんて」と気持ちが腐っていた。
 大学時代はチアリーダーで「朝チアを見て、頑張っていた時の自分を思い出した。自分を変えて、殻を破りたい」と感じた。約五年間、二人で踊った。その後は新たな仲間ができ、これまでに十五人が在籍。八人が引退し、現在は七人で活動している。

出勤途中のサラリーマン(右)にエール!

 サラリーマンの多くは関心を示さず、親指を下に向けられたことさえある。それでも「勝手に応援しているので、百人が通り過ぎても、百一人目が一歩を踏み出す後押しになれば」と考えている。
 四十代ぐらいの女性から「私、リストラされたの。でも、できることがあるかもしれないと思った」と呼び止められたことも。「彼女にプロポーズします」と張り切っていた三十代の男性や、「娘ががんになり、自分もふさぎ込んでいたけど、がんばらなきゃって思った」と泣いた七十代の女性もいた。
 「目が合って無言のコミュニケーションが成立した時、自分の存在を肯定された喜びがある。応援をすると、自分も元気になれる」と朝妻さん。一八年には、チア部の上部団体として一般社団法人「全日本応援協会」を設立し、講演活動も始めた。
 「応援される側が応援する側に回り、好循環が広まれば、みんなが元気になれる。そのための活動をしていきたい」と思っている。

◆今はリモートで!

(全日本女子チア部  ☆AJO提供)

 「全日本女子チア部☆AJO」は緊急事態宣言を受け、朝チアを休止。代わりにオンラインによる「リモートチア」を始めた。
 オンライン会議システム「Zoom(ズーム)」を使い、分割された画面で、メンバーがそれぞれチアダンスを踊る動画をフェイスブックに投稿。「口角を上げて」「あたたかいもの食べてココロもカラダもポカポカに」などの応援メッセージも掲げる。
 コロナ禍でフリーアナウンサーの朝妻さんも何本も仕事がキャンセルになった。それでも15日のリモートチアでは「芽が出ない時は根をのばそう。土台は大事だね」とメッセージに書いた。
 「計画していたことができなくなったり、うまくいかないことを嘆くよりも、今だからできることを考えてほしい。いつか今よりもきれいな花を咲かせましょう」
 文・宮本隆康/写真・松崎浩一
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