文化功労者、文楽三味線で初選出・鶴澤清治 語りとの「競い」心掛け

2021年1月22日 07時14分

文化功労者選出が「(後輩の)励みになれば」と話す鶴澤清治=東京都千代田区で

 人形浄瑠璃文楽三味線の鶴澤清治(75)が二〇二〇年度の文化功労者に選ばれた。文楽の三味線弾きでは初めて。「縁のないものと本当に思っていたので、驚いています」と率直に語る。文化功労者顕彰記念の東京・国立劇場二月文楽公演では名作「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」に出演する。 (山岸利行)
 八歳で初舞台を踏んで以来六十七年、三味線一筋の人生。三十〜四十代にかけて十三年間、人間国宝の四代竹本越路太夫の三味線をつとめた。二〇〇七年には自身も人間国宝に。切れ味鋭い独特の音色や人間ドラマを骨太に表現する文楽三味線の第一人者だが、文化功労者選出の知らせに「僕よりも数段立派な方がいらっしゃるのに、僕なんかがいただいて申し訳ない」と語る言葉は謙虚だ。同時に「(後輩の)励みになれば」と、若い世代への思いも忘れない。
 二月公演では、「伽羅先代萩 御殿の段」で、豊竹呂勢太夫の三味線をつとめる。仙台藩・伊達家で起きたお家騒動に材をとった作品で、命を狙われている若殿の鶴喜代を必死に守る乳母・政岡の奮闘などが描かれる。特に「御殿の段」は、実の子である千松を犠牲にしながらも若殿を守る重要な場面で、「難しい曲。三十二歳の時、越路師匠(竹本越路太夫)とやらせてもらいました。未熟な三味線で、どぎまぎしてやった記憶があります」と振り返る。「自分の子をほめながらも若殿に意見するところもあり、よくできた作品」と評し、今回は「新たな気持ちで取り組みたい」という。
 太夫(語り)、三味線、人形遣いが一つになって成り立つ文楽。特に太夫と三味線は「呼吸」を合わせることが欠かせないが、「合いすぎてもだめ」と話す。「舞台で太夫と三味線がけんかする(争う)やりとりが持ち味。表現力がぶつかり合い、切磋琢磨(せっさたくま)するのが文楽の魅力」という。
 「越路師匠は、ものすごく緻密に組み立てられた語り口。そこからはみ出ると舞台からはじき出される感じで、ほかの太夫では経験がない」というほど、厳しい経験を積んできた。その三味線弾きの重鎮の目に最近の後輩たちは「気合が不足している。自己主張が足りない」と映ることがある。「三味線は太夫の伴奏じゃない。よく合うスパイスなんです。表現することが大事」と強調する。

◆国立劇場二月文楽公演(二月六〜二十二日)

 ▽第一部(午前十時半開演)=「五条橋」「伽羅先代萩」
 ▽第二部(午後一時五十分開演)=「曲輪〓(くるわぶんしょう)」「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」
 ▽第三部(同五時半開演)=「冥途(めいど)の飛脚(ひきゃく)」
 国立劇場チケットセンター=(電)0570・07・9900。
<つるさわ・せいじ> 1945年10月15日生まれ。53年、四代鶴澤清六に入門、鶴澤清治を名乗る。54年、初舞台。64年、十代竹澤弥七門下。76年11月から13年間、四代竹本越路太夫の三味線をつとめる。2006年、紫綬褒章受章。07年、人間国宝。20年、文化功労者。 
※ 〓は、文へんに章

「伽羅先代萩 御殿の段」の政岡=国立劇場提供


関連キーワード

PR情報