<視点>東京五輪の開催判断は明確な指標で 「無観客」「中止」も含めて現実的な議論を

2021年1月22日 13時31分

国立競技場(奥)と五輪マークのモニュメント 

 23日で東京五輪開幕まであと半年を迎える。選手を取材していると、新型コロナウイルスが再拡大してきた昨年12月ごろから「もし五輪があれば」「無事に開催されれば」と、条件付きで語られるようになってきた。
 共同通信の世論調査で今夏開催の「中止」「再延期」を合わせた反対意見が80・1%と報じられた直後、ある選手は「正直、国民の声はすごく気になる。この数字だと後ろめたさではないけど、やっていいのかなという気持ちになる」と打ち明けた。続けて「開催、無観客、中止といったパターンと条件を事前に示して、みんなが納得できるようにした方がよくないですか?」と問い掛けてきた。
 大舞台があると信じて練習に打ち込む。だが、コロナ禍の現実とも向き合っていた。

◆五輪の価値下げる政治家の発言

 一方で、政治家の言葉が多くの人の神経を逆なでする。「開催しないお考えを聞いてみたい」「コロナに打ち勝った証しに」。弱気な発言が懐疑論に拍車をかけるのは理解できる。しかし、その言い方からは、現実を見ず開催へ突っ走る印象しか受けない。五輪の価値を下げ、反対派を増やすのではと思ってしまう。
 国内外で感染拡大は収まらず、先行きは不透明。欧米メディアからは中止論が浮上する。これまで強気だった大会関係者は「延期になった昨年と同じ流れになっている。現役選手やNOC(各国・地域の国内オリンピック委員会)の一部から慎重論が出始めると、中止への動きが一気に早まるだろう」と声色が変わってきた。
 遅すぎるとはいえ、すぐにでも「無観客」「中止」を選択肢に入れ、現実的な議論にかじを切るべきではないか。その際にはアスリート、国民、準備をしてきた大会関係者らが共有できる「選手側」と「受け入れる側」の明確な指標が必要になる。それは開催基準の可視化だ。
 例えば、選手側には、参加する206のNOCに練習環境や準備状況、ワクチンに関するアンケートを取り、五大陸で何カ国以上が参加できる状態かを確認する。選手選考が終了できない競技は、現在のランキングや直近の世界大会の成績に準ずるなどの合意も欠かせない。
 五輪会場が9都道県にまたがる日本はコロナの感染状況次第。「ステージ3」は中止、「ステージ2」なら無観客、「ステージ1」で一定数の観客を入れるなど具体的な開催条件を示す。もちろん医療提供体制に支障がないことが大前提になる。3月25日の聖火リレーが始まる前に方向性を出すのが望ましい。
 開催基準が見えることによって、どう転んでも賛同を得やすくなるのではないか。冒頭のアスリートは力を込めて言った。「今、このコロナの状況で五輪より大切なものもある。でも、もし中止になったら『仕方ないな』と思えるようにしてほしい」 (運動部・森合正範)

森合正範記者

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