東京五輪まで半年 コロナ禍の選手に求められる対応力と平常心

2021年1月23日 06時00分
 史上初めて延期された東京五輪は、23日で開幕まであと半年。新型コロナウイルスの猛威は収束せず、今夏の開催に懐疑的な声が広がる。政府や大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)は安全で安心な大会の実現へ準備を続けるが、無観客での開催案が浮上するなど、従来通りの運営は非現実的だ。コロナ禍の最中、厳戒態勢で開かれてきたスポーツの国際大会で、アスリートは経験したことのない状況に直面しながらも、五輪を見据えて対応しようと模索している。(森合正範、磯部旭弘)
 1月中旬のドーハ。柔道の日本勢が約1年ぶりに出場した国際大会は非日常の世界が広がっていた。「これまでと比べものにならないストレスを感じたのでは」。女子の増地克之監督は選手をおもんぱかった。
 帰国までの9日間でPCR検査は6回。ドーハ到着時には17時間もホテルの部屋から出られなかった。男子90キロ級の向翔一郎選手(ALSOK)は「ストレスをためないようにユーチューブや映画を見たり、音楽を聴いていた」。

◆コロナ対策の「バブル」方式とは

 練習場は1日50分しか使用できず、同行できなかった練習パートナーの代わりに指導陣が稽古相手を務めた。厳しい状況を想定し、女子57キロ級の芳田司選手(コマツ)は日本で減量を済ませる異例の調整法をとった。全日本柔道連盟の金野潤強化委員長は「本番まで2大会は経験してほしい」と特異な環境下での「慣れ」が重要だと説く。
 コロナ禍の中では外部との接触を断った「バブル」と呼ばれる大会方式が採用され、選手の行動範囲は試合会場と宿舎のみ。精神的に負担がかかり、閉鎖された空間でいかにリラックスできるかがプレーの鍵を握る。昨年秋にブダペストで競泳の国際リーグに出場した萩野公介選手(ブリヂストン)は「チームメートと会うのも練習と食事の時だけ」。たわいもない話をすることで心を休めた。

◆卓球・伊藤美誠も困惑「試合に集中したい」

 昨年11月に中国での国際大会に臨んだ卓球女子の伊藤美誠選手(スターツ)は、入国後の隔離期間、練習環境、外出制限の有無などが直前まで分からないまま現地へ向かった。情報は二転三転し、「選手は試合に集中したいと正直思うんですけどね」と困惑した。
 テニスの全豪オープンでは、主催者が用意したチャーター機でメルボルン入りした選手らから複数の感染者が出た。現在、同乗した70人以上の選手らがホテルの自室で2週間の外出禁止を強いられている。練習できないことへの不満が出るなど、バブル方式でも運営の難しさを露呈した。
 様変わりした大会に戸惑いながらも、選手が口をそろえるのは「試合に出られる喜び」と「周囲への感謝」。五輪まであと半年。状況は刻一刻と変わる。選手には強さや調整力だけでなく、変化への対応力と平常心が求められている。

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