コロナ関連法改正案 私権を制限、罰則導入の強権的措置に懸念

2021年1月23日 06時00分
 政府が22日に閣議決定した新型コロナウイルス対策のための関連法改正案は緊急事態宣言を出す前から私権を制限し、罰則で強制する厳しい内容が盛り込まれた。国や都道府県の権限を強化して感染拡大を防ぐ狙いだが、事業者や患者らを過度に抑えつけ、反発や差別を招いて国民の協力を得られなくなる懸念もある。

◆罰則より医療体制の整備が先決では

 改正案の大きな柱は感染症法に盛り込まれた刑事罰だ。政府は罰則がなくて問題になった事例の集計や分析を示さず、新たに法律を作るための根拠となる「立法事実」がはっきりしないのに、入院を拒んだり、入院先から逃げたりした患者への懲役刑を新設する。
 感染症法は結核やハンセン病の患者が科学的根拠の乏しい中で強制収容された歴史を踏まえて「国及び地方公共団体は、感染症の患者等の人権を尊重しなければならない」と明記する。必要性が不明確なまま罰則を設ければ、法の理念に反して差別や偏見を助長することになりかねない。
 日本医学会連合は緊急声明で、入院を拒む感染者には周囲からの偏見や差別などの理由があるかもしれないと指摘。「これらの状況を抑止する対策を伴わずに、感染者個人に責任を負わせることは倫理的に受け入れがたい」と訴える。
 感染拡大が止まらず、各地で病床不足が深刻化し、自宅や宿泊施設で患者が死亡する問題が相次ぐ。医療提供体制の整備と拡充が先決なのに、入院拒否者への罰則の導入を急ぐのはちぐはぐだとの指摘がある。

◆不自由強いられる国民は納得するか

 もう1つの柱として、特別措置法の改正案に緊急事態宣言の前段階に当たる「まん延防止等重点措置」を新設。宣言前でも都道府県知事は休業や営業時間の短縮を事業者に要請、命令できるとし、事業者が従わなかった場合には前科とならない行政罰の過料を科す。
 どんな状況で措置が適用されるかは政令で定めるとされ、現段階では不明。強制力のない「お願い」で休業を余儀なくされたのに比べ、法律で行政処分の手続きが適用されれば、権利保護につながるとの見方もあるが、必要最小限の私権制限しか認めないとする特措法の趣旨に合わないとの意見も根強い。
 「Go To キャンペーン」への固執や緊急事態宣言の再発令の遅れなど後手に回った政府の対応が感染拡大を招いたとされ、国民は外出や会食の自粛で不自由な生活を強いられている。さらに私権制限を強める法改正が理解を得られる保証はない。与党内からも「罰則を加えて実効性を確保する手法に納得していない人は多い」(自民党の石破茂元幹事長)と批判的な声が上がっている。

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