大統領交代でどうなる? トランプ氏去ってメディア 実はがっかり 

2021年1月23日 07時20分
 お騒がせ者のトランプが米ホワイトハウスから去った。政権批判の急先鋒(せんぽう)だった左派系のCNNテレビなどには「グッドニュース」のはずだが、そうとは言い切れないようだ。トランプ政権下、ニュースへの関心が高まり、主要メディアは軒並み業績アップ。「トランプ・バンプ(旋風)」と呼ばれる追い風が吹いたからだ。良識派のバイデンの大統領就任で風向きは変わるのか。 (鈴木伸幸)
 トランプは目を離せない存在だった。記者会見では、ロシアとの関係や納税書類の問題など答えたくない質問をされると「フェイク(偽)ニュース」と記者を攻撃。質問を繰り返す記者に「おまえを指名していない」。まるでテレビのリアリティー番組で、それが多くの関心を引きつけていた。
 典型的なのは、今月上旬のトランプ支持者による連邦議会占拠事件だ。当日、CNNの平均視聴者数は五百二十万人で、開局四十年で最多を記録。同じ左派系とされるMSNBCは四百万人、「トランプに近い」とされる右派系のFOXニュースは三百万人だった。
 コロナ禍に大統領選、さらには黒人差別への反対運動などのトピックスがあった昨年の通算でも、報道番組の平均視聴者数は急伸。FOXは前年比43%増の三百六十万人でケーブル局の首位を守り、23%増で二百十万人のMSNBCが続き、三位のCNNは百八十万人で、83%増と記録的な伸びを示した。
 “主役”だったトランプの退任はどう影響するのか。CNN元社長のジョン・クラインがバイデンについて「おじいちゃんは、いいヤツだ。誰もが安心できる。もうニュースを見る必要がなくなるだろう」と話したことが、話題になっている。

バイデン大統領=AP

 報道番組への関心には波があり、オバマが黒人として史上初めて大統領選に勝った二〇〇八年もCNNは好調だった。だが、オバマ熱が冷めると視聴者は減少。金融危機「リーマン・ショック」の影響もあってクラインは、その二年後にCNNの社長を解任された。
 トランプ・バンプは、テレビに限らず、新聞にも吹いた。ニューヨーク・タイムズ紙は、紙版こそ下落傾向に歯止めがかからず約八十万部に落ちたが、大胆な人員整理と組織改革で強化した電子版が紙版の販売エリア外を中心に急伸。昨秋には紙版と電子版を合わせた有料契約者は、初めて七百万人を突破した。
 新興のネットメディアに押されていたテレビや新聞が、異端のトランプの登場で、「伝統ブランド」としての信頼感を背景に再生したといえそうだ。ただし、電子版読者はテレビ視聴者と同様に、増えるのも減るのも早い。そのため、「受け狙い」で左派系メディアの論調はより左寄りに、右派系はより右寄りになりがち。視聴率の影響を受けやすいテレビ局に、新聞が近づきつつある。
 メディア事情に詳しいジャーナリストのスティーブン・パールバーグは「バイデンの中道左派政権下、トランプ批判で視聴者や読者を増やした左派系には、厳しい時代になるかもしれない。右派系も“トランプ劇場の主役”の退場で、何らかの影響はある。報道機関がそれぞれの論調をより明確にして、反対意見を受け入れる寛容性が薄れるかもしれない」と懸念を示した。 (文中敬称略)

◆全体を見る視野を

<元TBSキャスターで白鴎大学の下村健一特任教授の話> 米国メディアで受け狙いの両極化が進むと、日本の言論にも影響が及ぶ。今こそ、メディアリテラシーの強化が急務だ。偏った窓から一つの景色ばかり見て、他の景色を見ている人を「間違っている」と責めるのではなく、右から左まで全体の景色を包摂する見方を身に付けなければならない。気に入らない景色も見て視野を広げないと、分断の拡大は避けられない。

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