核禁条約発効 理想に一歩近づいた

2021年1月23日 07時50分
 核兵器の使用や保有などを全面的に禁止する、核兵器禁止条約が発効した。小さな一歩だが「核なき世界」に近づいた。唯一の戦争被爆国・日本は、理想実現に向けて協力を惜しんではならない。
 核兵器は最大級の非人道兵器であり、世界に一万三千発以上ある。しかし、包括的に禁止する条約はなかった。それだけに、条約発効には大きな意味がある。
 まず、核兵器への見方が大きく変わるだろう。条約が発効した国・地域において核兵器は、「力の象徴」ではなく「非合法」な存在となるからだ。
 核保有国が条約に反発するのは、この心理的効果を恐れてのことだ。核拡散防止条約(NPT)など、核軍縮の枠組みにも前向きな影響を与えるに違いない。
 この一年、世界の国々は新型コロナウイルスとの闘いが続き、二百万人以上が犠牲となった。
 非政府組織(NGO)の試算によれば、核大国の米国が二〇一九年に使った核軍備費を医療費に置き換えると、集中治療室のベッド三十万床、人工呼吸器三万五千台などを用意できたという。
 核兵器をどれだけ多く持っていても、一人一人の命を守れるわけではない。コロナ禍から学んだこの教訓を心に刻みたい。
 条約には核保有国や核の傘に入っている国々が参加していない。そのため、核軍縮につながらないという否定的な意見もある。
 しかし、今では当たり前である奴隷制の否定や植民地の廃止、女性への参政権も、実現不可能と思われていた時代があった。
 現状に甘んじず、あえて高い理想を掲げることが、社会を変える力となる。このことは歴史が証明している。核兵器禁止も、決してあきらめてはなるまい。
 核を持つことで、戦争が避けられるという「抑止効果」を信じている人も少なくないだろう。
 即座に廃絶できないにしても、核の危険な均衡に、われわれの未来を託し続けていいのだろうか。
 年内にも条約の締約国会議が開かれ、核兵器廃棄の期限といった運用策が話し合われる。
 米国は核禁条約に反対しているが、バイデン新政権は予算削減のため、国防戦略における核兵器の役割を縮小する方針と伝えられている。取り組みに期待したい。
 日本政府は条約を無視する姿勢を改め、締約国会議にオブザーバー参加すべきだ。そして核なき世界の実現を望む日本と世界の人々の声に、耳を傾けてほしい。

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