寒空シャワー、“密”な講習…ずさんな技能実習制度は「安価な労働力を集める制度」か <夢見た果てに 追い込まれるベトナム人㊦>

2021年1月23日 11時56分
 冷えたコンクリート塀に囲まれた屋外の駐車場に、仮設のシャワーや簡易トイレ、キッチンとして使うコンテナが並んでいた。昨年12月、主にベトナムや中国からの技能実習生が日本語講習などを受けている千葉県八街市の研修施設。「人が暮らす環境ではない」と施設関係者は告発する。
 外国人技能実習制度では、実習生が来日後の1~2カ月間、日本語やマナーなどを学ぶ講習を受けなければならない。同業者の組合などでつくる日本側の受け入れ窓口「監理団体」が講習計画を作り、民間の研修会社などが講習を請け負う。生活の場も用意し、この間、実習には就けない。

講習が行われている教室。技能実習生が密集し、飛沫を防ぐアクリル板が置かれていない席も多い(関係者提供)=昨年、千葉県八街市で

 施設関係者によると、仮設のシャワーは最近までついたての上が吹き抜けで、寒さでシャワーを浴びたがらない実習生もいた。新型コロナウイルス対策もずさん。教室には一度に60人ほど集まるが、生徒同士の間隔は狭く、飛沫ひまつを防ぐアクリル板も一部しかない。

◆「多くの施設はまともな講習していない」

 施設の内部資料によると、企業に送り出せる配属可能日より前に、企業に配属されたとの記録が残っていた。制度を監督する国の認可法人「外国人技能実習機構」に提出した計画通りの講習を行っていない可能性が高い。本紙が施設側に電話で問い合わせたが、「取材には応じていない」とすぐに切られた。
 外国人支援に携わるNPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平代表理事は「多くの施設は講習をまともに行っていないだろう。私たちが保護する実習生がほとんど日本語を話せないのが証しだ。監理団体と結託しているケースもある」という。

◆美辞麗句の元、人材ビジネスに

 法務省によると、一昨年末現在で外国人技能実習生は約41万人で、その約半分がベトナム人。新型コロナウイルスの感染拡大で新規受け入れがいったん止まったが、建設や自動車整備、介護などで企業側の需要は底堅くある。半面、コロナ禍で職を失う実習生も多く、調整できていない。

屋外の駐車場に設けられた技能実習生らが食事を取るスペース(関係者提供)

 日本で技能を習得するとの建前で1993年に始まった技能実習制度だが、実態は「安価な労働力を集める制度」との批判が絶えない。劣悪な労働環境であっても、コロナ禍の特例を除き転職ができないことなどを背景に、失踪者は2018年だけで9052人。「日本に行けば稼げる」と吹き込まれ、借金をして多額の仲介料を支払っているケースが多く、帰るに帰れない。新型コロナの感染拡大は仕事の場を減らし、そうした人たちをさらに追い込んでいる。
 技能実習制度に詳しい神戸大の斉藤善久准教授(アジア労働法)は「制度の実態は『出稼ぎ』で、安い使い捨ての労働力にしているのに『国際貢献』や『技能移転』と美辞麗句を並べている。民間同士のやりとりは人材ビジネスになりやすい。(実習生の)借金の一因になり、無理なしわ寄せが実習生に行っている。本当に必要なら、現地で国が仲介するべきだ」と指摘する。(井上靖史)

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