認知症女性の口座から消えた1140万円 老人ホーム職員が引き出す? 福岡市が調査へ

2021年1月24日 06時00分
遺族側が入手した口座の取引履歴コピー(写真の一部を加工しています)

遺族側が入手した口座の取引履歴コピー(写真の一部を加工しています)

 「福岡市内の老人ホームに入居していた認知症の叔母の口座から、計約1140万円が複数のコンビニなどで引き出されていた」。めいに当たる女性から情報が寄せられた。叔母の死後に調べたところ、引き出し履歴は約4年前の1カ月間に集中していた。施設側は関与を否定するが、調査対象は在職者のみで、当時の職員は含まれていないという。福岡市は老人福祉法に基づき調査に乗り出す方針だ。

◆1ヵ月弱で67回の出金

 叔母は2014年、夫が亡くなったのを機に、東京から福岡市内の有料老人ホームに引っ越してきた。都内にあった土地の売却益などで多額の資産を保有。当時、既に90歳近く、施設内でも通帳が入った手提げ袋をいつも持ち歩き、その内容を周囲に見せることもあったという。
 年々、叔母の認知症の症状が悪化。19年6月、叔母は体調が悪化して入院し、施設を退所。叔母は同年9月に病院で亡くなった。
 その後、女性は叔母の通帳や印鑑が見当たらないことから、通帳の再発行などの手続きをした。銀行から取引履歴を入手したのは20年1月。施設に入居中だった16年12月3日~26日のわずか1カ月弱の間に、67回にわたって計1140万円が引き出されていた。引き出し場所は施設周辺のコンビニの現金自動預払機(ATM)を中心に18カ所。額は1回に10万~20万円だった。

◆施設側、現職の職員7人だけ調査し関与否定

 女性によると、叔母は入所当時から単独では外出できなくなっていた。女性は弁護士を立てて施設側と交渉しているが、提出された当時の介護記録に外出の記載はなかったという。
 女性は「施設職員が叔母に付き添うか、誰かがカードを持ち出したとしか、考えられない」と話す。入居費など毎月必要な費用は、口座から引き落とされていた。
 女性は施設の運営会社に調査を求めた。20年10月時点の回答は「銀行口座から引き出した人物を特定する情報は見つからなかった」。その後のやりとりで、施設側が調べた職員は現職の7人にとどまり、当時の在職者まで調べていなかったと分かったという。
 施設側は取材に「個人情報なので、該当する人物がいたかどうかも含め、回答できない」としている。
 女性は、老人福祉法に基づく施設への立ち入り調査を福岡市に要請。同市高齢社会部は取材に「問題がある事案については徹底的に調べる」としている。(西日本新聞・竹次稔)

◆後を絶たない施設側との金銭トラブル

 女性が暮らしていたのは住宅型の「有料老人ホーム」だった。認知症などで十分な判断能力がない場合、家族の承諾を得て施設側が現金や預金を管理するケースもあるが、金銭トラブルは全国で絶えない。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い利用者と親族の「接点」が減る中、多くの施設は神経をとがらせている。
 厚生労働省によると、高齢者施設や訪問介護に絡み、施設職員らが高齢者の金品を着服したり、無断流用したりした事例は「経済的虐待」と呼ばれ、2019年度に全国で計41人が被害に遭ったと報告された。
 福岡県では19年度までの5年間に計7件13人。有料老人ホームを利用する80代女性の預金口座から、管理を請け負っていた施設長が無断で現金を引き出した例もあった。認知症で記憶が確かではない利用者もおり、「氷山の一角」である可能性もある。
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