「まずは核の傘の放棄を」日本の核兵器禁止条約参加への道開く「北東アジア非核地帯構想」

2021年1月23日 20時41分
 日本政府は22日に発効した核兵器禁止条約への参加を拒む理由として、北朝鮮の核戦力強化を挙げる。米国の「核の傘」に依存し続け、北朝鮮の非核化は進んでいない。そんな情勢を打破し、日本が条約に参加するための道筋として研究者らは「北東アジア非核地帯構想」を提唱しており、被爆地などからは政府に検討を求める声が上がっている。

◆東南アジアなど5地域で実現

 非核地帯構想は、特定の地域の国々が核兵器の開発や配備をしないと約束し、地域外の核保有国には核攻撃をしないよう求めて非核化を実現する考えで、賛同する国々は非核地帯条約を結ぶ。東南アジアやアフリカ、中南米など5つの地域で成立しており、核兵器禁止条約もこうした非核地帯の国が推進した。
 北東アジアの構想は冷戦終結後の1990年代以降、朝鮮半島の非核化を議論する中で、日米両国の研究者から提唱されてきた。南北軍事境界線上にある板門店から半径2000キロ以内を非核化する案などが議論されてきたが、現在、最も有力なのは「スリー・プラス・スリー」案だ。
 日本と韓国、北朝鮮の3カ国を「地帯内国家」、米国、中国、ロシアの3カ国を「近隣核兵器国」と定義。地帯内国家は核兵器の開発や所有、配備などを互いに禁止し、近隣核兵器国は核攻撃や核の持ち込みをしないと約束。6カ国が条約を結ぶことで地域の安全を保ち、非核化を目指す。

◆「北に核を諦めさせる手段」

 この構想は核廃絶に取り組む日本の非政府組織(NGO)らが提案し、広島、長崎両市も政府に検討を促す。民主党政権時代の2012年には当時の岡田克也副総理が国会で「核を北朝鮮に諦めさせる手段として活用することは可能だ」と答弁したこともある。
 これまで政府は北朝鮮の核脅威を理由に実現へ動いたことはないが、17年に核兵器禁止条約が採択されて以降、日本が条約に参加するための方策として構想の意義が高まっている。北東アジアに非核地帯ができれば、日本が米国の「核の傘」から離脱し、日本が条約に参加する素地ができるからだ。
 核を巡る国際情勢を調査しているNPO法人「ピースデポ」の梅林宏道氏は「北東アジア非核地帯構想は日本が『核の傘』政策を放棄し、核兵器禁止条約に入るための最も現実的な提案だ」と主張する。
 長崎大核兵器廃絶研究センターの中村桂子准教授(核軍縮)も「核に頼らない具体的な安全保障のあり方を示している点で意義がある」と指摘。「核兵器禁止条約とは相互補強関係にあり、両方を進めることが核廃絶にとって重要だ」と訴える。(木谷孝洋)

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