感染症法「患者に罰則」正当か<新型コロナ法改正ここが論点②>

2021年1月25日 06時00分
 感染症法改正案には、新型コロナウイルス感染者への刑事罰の新設が盛り込まれた。憲法が保障する「移動の自由」の制約につながるだけでなく、患者が「犯罪者」になりかねない。かつて感染症患者への人権侵害や差別が行われた歴史もあり、懸念は根強い。

◆入院措置の拒否や入院先から逃げ出すと刑事罰

 刑事罰が適用されるのは、都道府県知事による入院措置の拒否や、入院先から逃げ出した場合で、1年以下の懲役か100万円以下の罰金だ。政府は与野党協議で、患者が入院先から無断外出して温泉施設を利用したり、宿泊療養中に出歩いたりした事例を紹介。行動の制約には罰則による強制力という「最終的な手段」(厚生労働省幹部)が不可欠と訴える。
 だが、政府の説明には異論も多い。入院勧告に従わなかった患者が感染を広げたという科学的な根拠を示していないからだ。厚労省は刑事罰の対象になるような事例が全国で何件あったかを調査、集計していないことも認めており、人権団体などは「強力な人権制約を正当化する事実は存在しない」と指摘する。

◆ハンセン病政策での苦い教訓

 反発が広がる背景には、感染症を巡る過去の苦い教訓がある。日本では戦前からハンセン病患者の強制隔離政策を実施し、治療が可能になった戦後も人権侵害や差別が横行した。
 日本医学会連合は声明で、らい予防法廃止後の1998年に制定された感染症法が「歴史的反省のうえに成立した経緯を深く認識」するよう求めているとして「感染者個人に責任を負わせることは倫理的に受け入れがたい」と再考を迫っている。与野党の修正協議では懲役刑の部分の削除が検討される。
 改正案には、患者が感染経路の追跡調査を拒んだり、虚偽の回答をしたりした場合にも50万円以下の罰金を科すと規定する。罰則を導入すれば、検査そのものを避けることにつながり、対策の実効性を高める狙いに逆行するとの指摘もある。(坂田奈央)

関連キーワード

PR情報