「喫茶アネモネ」単行本化 柘植文さんに聞く クセになる店、気付けば常連

2021年1月25日 07時36分
 二〇一七年十月から週一回(現在は金曜)、本紙で連載中の漫画「喫茶アネモネ」が単行本になり、二十六日から発売されます。どこか懐かしい喫茶店を舞台にマスター、バイトのよっちゃん、お客さんたちの絶妙な掛け合いが笑いを誘う作品は、どのように生み出されているのでしょうか。作者の柘植文さん(48)に聞きました。 (聞き手・北爪三記)
 −一回分を仕上げる流れは。
 ネーム(セリフ入りのコマ割り)が、すぐできる時は半日ぐらい、全然できないと二日ぐらいかかる時があって。その後、原稿は七〜八時間ですね。線は鉛筆で描いて、スキャンしてパソコンで色を付けます。
 −ネーム作りはネタを考えるということですか。
 そうですね。例えば、サンタさんのネタにしようとして、考えるけどできない。じゃ、寒いことをネタにしようと思って、やっぱりできないと。で、もう一回戻って、サンタさんでうまくできたり。結局だめだと、もっと違うのにしようとか。行ったり来たりして、パッと浮かぶまでいろんなことをしてる感じですね。
 −ネタ帳はありますか。
 はい。A4の紙を四分の一に切って、一枚ずつ、気になったことをメモしてます。アネモネは季節感も出したいので、春、夏、秋、冬とか分けておいて、春ならお花見のネタとかを書いておく。季節感に関係ないものもあります。
 −ネタのヒントは。
 生活すべてですね。常に「あっ、これは面白いかも」と思ったらメモします。「これってなんなんだ?」と思ったことも。ネタ帳を見てまとめて、ネームにするという感じです。
 −モデルのお店はあるんですか。
 モデルというか、たまーに行く喫茶店によぼよぼなおじいさんがいて。そのおじいさんはお客さんとよくしゃべる人ですけど。昔っぽくて、すごくおしゃれな感じでもないし、汚いわけでもない。その雰囲気が好きだったので、そのイメージですね。
 −マスターが二週続けて登場しなかったのを心配した読者から、はがきが届いたことがありました。
 あんなに心配されちゃうんだ、申し訳なかったなと。二週(不在)はだめなんだなと思いましたね。
 −よっちゃんは年齢不詳ですね。
 そうなんですよね。最初は、実は子どもがいるとか、それくらいにしようと思ってたんですけど。だんだん描いてきたら、今更変な感じだなと思って。なんとなく二十〜三十代みたいな気持ちでいますけど。
 −アネモネのテイストを決めていますか。
 特に決めてないですね。でも、新聞というのは意識してるかな。最初に喫茶店にしようと思ったのは、みなさんが受け入れやすい日常的な舞台で、いろんな人が来ても不自然じゃない、ということは考えました。
 親に届いた年賀状で「アネモネ読んでます」という方が数人いらして。うちの母が「アネモネは老人に受ける感じだものね」と言うので、そうなの?って思ったんですけど。
 −読者の年代は意識していますか。
 そんなには意識してないですね。子どもから大人まで、いろんな人にわかりやすいように、という気持ちです。
 −単行本の収録作品で、好きなのは。
 蚊の回(昨年五月十五日、左に再掲)とか好きですね。楽しそうで、ちょっと変な感じで。自由な感じが好きなんですよ。でも、ツイッターで感想を見ると、自分ではあんまり、と思っていても「今週の面白かった」と面白がってくれる人もいる。自分で凝り固まってもだめなんでしょうね。
 −いよいよあす、単行本発売です。
 毎週新聞に載ってるのを読む時と、単行本でまとめて読むっていうのは違うんだろうなと思って。みなさんに楽しんでもらえたらうれしいですね。
<つげ・あや> 1973年、東京都生まれ。99年、商業誌デビュー。月刊誌「Kiss」(講談社)に『幸子、生きてます』(既刊2巻)、同「まんがライフオリジナル」(竹書房)に『中年女子画報』(既刊3冊)を連載中。他の著書に『野田ともうします。』(全7巻、講談社)、『むか〜しむかしの』(全2巻、同)など。

◆あす発売

 108話を収録。1100円。書店のほか、新聞販売店でも取り次ぎます。問い合わせは、東京新聞出版・社会事業部=(電)03・6910・2527(土日祝日除く)=へ。
東京新聞Webページで収録4作などが見られます。

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