<サブカルWorld>(1)鬼滅の刃 あるわあるわ、全国に「聖地」

2021年1月26日 07時38分
 始まりました! 新コーナー「サブカルWorld」。日本の文化・芸能の中で今、もっとも活気があり、世界の注目を浴びているのがこのサブカルです。とはいえ、数ある人気のサブカル・コンテンツも、知らない人にとってはピンとこないもの。そんなサブカル苦手の皆さんにも分かりやすく、その魅力をお伝えしていきます。第1回は大人気の漫画「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」。単にコミックやアニメを楽しむだけではなく、作品世界と関連する「聖地」を訪ね歩くファンが大勢います。では、聖地はどのぐらいあるのか。調べてみると、あるわあるわ…。
 「聖地巡礼」は、作中に登場する場所を特定し、実際にそこを訪れるのが一般的だ。ただ、「鬼滅の刃」で現実の地名が明確に示されているのは、主人公の竈門炭治郎(かまどたんじろう)が、敵のボス・鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)と遭遇する東京・浅草くらい。ほかは、炭治郎ら主要キャラの出身地の山など以外に、公式に認められているモデルはない。
 それでも、「漢字が同じ」「雰囲気が似ている」などと、つながりを見つけ出して巡礼するのがファンの楽しみ方。炭治郎の名字と同じ漢字の「竈門神社」は、どこもイラスト入りの絵馬が奉納されるように。「竈」の書き順をアニメで紹介している宮城県塩竈市のホームページにはアクセスが殺到し、「鬼滅」を逆さにした滅鬼地区(富山市)も話題になった。

(2)宝満宮竈門神社の境内に並ぶ人気キャラクターを描いた絵馬=福岡県太宰府市

 各地で「発見」されているのが、割れた巨岩。市松模様の羽織を着て、刀を振り下ろせば、気分はもう炭治郎。同様の衣装を着て登場人物に扮(ふん)するコスプレを楽しむにはぴったりのシチュエーションとあって、写真を会員制交流サイト(SNS)にアップするコスプレーヤーが相次いでいる。
 聖地巡礼は、観光行動の一つとして、地元に経済波及効果をもたらすコンテンツツーリズムとしても注目されている。それにしても「鬼滅の刃」はなぜ、こんなにも聖地が出現したのか?

(16)登場人物が治療される場面と似ている「日本赤十字社中央病院病棟」。撮影に協力してくれた「鬼滅の刃」ファン=犬山市内山の博物館明治村で

 近畿大総合社会学部の岡本健(たけし)准教授(観光学)は「以前から作品と現実の接点をうまく探す人はいた。今はSNSの普及で、多くの人が理解しやすい作品と結び付けられる場所は格好のネタになる」と指摘。コスプレーヤーらの発信の巧みさもあり、「文化的な広がりにみんなが乗っかっている感じがする」とみる。
 聖地の活況が一時のブームに終わる懸念には「何でも維持するのは大変。一過性より、過剰な投資が問題」。一方、にぎわいの持続を願うなら「作品への理解のほか、地域の文化を楽しんでもらえる工夫が必要」という。訪れるファンにはマナーを守ることはもちろん、「せっかく足を運ぶのだから、周辺で見聞きすることに関心を持って楽しんでほしい」と呼び掛ける。食事や歴史、交流など思わぬところで新たな出会いがあるのも、聖地巡礼の効用だ。 (清水祐樹)

(28)作中のシーンと似ているとされるあしかがフラワーパークで見頃を迎えたフジの花(昨年4月、休園中に撮影)=栃木県足利市で

<鬼滅の刃> 大正時代の日本を舞台に、鬼に家族を惨殺された炭焼きの少年・竈門炭治郎が、鬼となりながらも生き残った妹・禰豆子(ねずこ)を人間に戻す方法を探そうと、鬼の討伐組織「鬼殺隊」の一員となって、鬼の始祖・鬼舞辻無惨が送り出す鬼と戦う。原作は吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)。
 2016〜20年、週刊少年ジャンプ(集英社)で連載され、コミックの累計発行部数は1億2000万部を突破。19年4月から放送されたアニメの続編として昨年10月に公開された「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は昨年末、宮崎駿監督「千と千尋の神隠し」の興行収入316億円を抜いて歴代1位に。興収は360億円を突破し、今も記録を伸ばし続けている。
*「サブカル」とは、漫画、アニメ、ゲームに代表される「サブカルチャー」の略語。この欄は、沼のように奥深いサブカルの魅力をお届けします。毎月第4火曜日掲載。

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