<かぞくのカタチ 選択的夫婦別姓制度を求めて>(上)二つの姓 「自分じゃない…」喪失感

2021年1月26日 07時55分
 夫婦が希望すれば、結婚前の姓を名乗れる「選択的夫婦別姓」。家族や生き方の多様化を受け、制度導入の機運が高まる。導入に反対する人たちの「旧姓使用拡大で対応できる」「家族の絆が壊れる」「子どもがかわいそう」との声に対し、導入を望む人たちの思いを二回に分け紹介する。 (砂本紅年、奥野斐)

妻の姓に改姓した佐藤貴行さん=いずれも東京都内で

 「姓の使い分けで混乱も生じる。一刻も早く制度を変えて」。東京都内の会社員佐藤貴行さん(32)は訴える。
 佐藤さんは結婚を機に戸籍名を妻の姓に変え、「佐藤」を通称名とした。妻は三姉妹の二番目。姉が結婚して夫の姓に変えたことから「家の名前を残したい」と相談してきた。佐藤さんも長男で「姓を継ぐ」つもりだったため、簡単には受け入れられなかった。
 「社会から認められたいという思いと、実質的なメリットがあることから、法律婚にこだわりました」。何度も話し合ったが、妻の思いも強く、最後は、佐藤さんが姓を理由に結婚をあきらめたくないと、親を説得した。「いざ妻の姓となると、自分が自分でなくなった喪失感があった」
 民法では結婚時、夫または妻のいずれかが姓を変えないといけない。でも姓を変える男性は4%だけ。佐藤さんも周囲から「婿養子?」と誤解されたり、「妻を説得できなかったの」と冷やかされたりした。
 「旧姓使用の拡大で対応できる」との声もあるが、旧姓との併用は生活や仕事に煩雑さを招く。仕事で通称を使う佐藤さんが困るのは海外出張。パスポートは妻の姓だが、宿泊予約は通称名。ホテルのチェックイン時に毎回、旧姓時のパスポートなどを示しながら、同一人物と説明することにストレスを感じるという。

「旧姓使用の拡大では問題は解決しない」と話す飯田順子さん

 同様に、二つの名前を使い分ける国立大の准教授飯田順子さんも「併用でさまざまな煩雑な手続きが追加で発生するが、そのことが理解されにくい」と話す。
 生まれた時の名前で論文発表や研究実績を積み、その後結婚した場合、改姓すると経歴の継続性が途切れてしまう。このため、女性研究者の多くが旧姓を通称で使い続ける。
 大学や金融機関に書類を提出する時、戸籍姓か通称名のどちらを使うかは書類の種類で変わり、書き直しの手間も発生しやすい。両姓併記の場合もあるが、「なぜ研究上で結婚などプライベートを公にしなければならないのか。仕事のしやすさにも影響する」。政府の「女性活躍推進」という方針との矛盾を感じる。
 出産や育児で研究にかけられる時間が限られる中、名前の使い分けに加え、旧姓では多くの金融機関で口座も開設できないなど、仕事に支障をきたす。「自分の生まれた姓で仕事を続けることはアイデンティティーの問題でもある。旧姓使用の拡大では解決しない。未来の女性研究者には自分の選んだ姓で仕事を続けられる社会であってほしい」 =(下)は二月二日掲載
 音声番組「新聞記者ラジオ」で、記者の解説が聞けます。

関連キーワード

PR情報

ライフスタイルの新着

記事一覧