「デブリが上にあるようなもの」格納容器の上ぶた高濃度放射能汚染 福島第一原発の廃炉に新たな壁

2021年1月27日 07時00分
 東京電力福島第一原発の事故収束作業に、新たな高い壁が立ちはだかる。原子力規制委員会の調査チームが26日、2、3号機の原子炉格納容器の上ぶたが極めて高濃度の放射能で汚染されているとする報告書案をまとめた。原子炉や建屋の解体をより難しくさせるレベルで、2041~51年に廃炉を終えるとする政府と東電の計画は見直しが避けられない。(小野沢健太、福岡範行)

左から、上部が大破した1号機、水素爆発を免れた2号機、使用済み核燃料の搬出が進む3号機、核燃料搬出を終えた4号機=福島県大熊町の東京電力福島第一原発で、本社ヘリ「おおづる」から

◆直径12メートル、3枚重ねで重さ465トン

 報告書案によると、メルトダウン(炉心溶融)を起こした2、3号機の格納容器の上ぶたの汚染レベルは想定を大きく超えていた。上ぶたは直径約12メートル。分厚いコンクリート製の3枚重ねで、総重量約465トン。動かすのは容易ではない。
 2号機の上ぶたの放射性セシウムの濃度は少なくとも2京~4京ベクレル(京は兆の1万倍)で、事故時に大気に放出された量の2倍程度と推計した。放射線量は毎時10シーベルトを超えるとみられる。人が1時間ほどとどまれば確実に死亡する。デブリがある格納容器底部の毎時7~42シーベルトにも匹敵する。3号機も3京ベクレルと極めて高い。
 調査に関わった規制委の更田豊志ふけたとよし委員長は、昨年末の記者会見で既に「格納容器の底にあるデブリ(事故で溶け落ちた核燃料)が、高いところにもあるようなもの。廃炉にとって極めてインパクトの強い情報だ」と危機感をあらわにしていた。

◆デブリ取り出し 1、3号機は方法すら決まらず

 政府と東電の計画では、1~3号機のデブリを遠隔操作で取り出し、「原子炉の冷温停止から30~40年後」に廃炉を完了するとしている。まず2号機で格納容器側面からロボットアームを入れ、デブリをかきだす計画。1、3号機は方法すら決まっていない。
 通常の原発ならば、ふたは炉心内の核燃料を出し入れするときに外される。ところが、ふたの高濃度汚染により、格納容器上部からデブリを取り出すことは極めて難しくなった。格納容器はそもそも解体できるのかという検討も迫られる。
 調査チームリーダーで原子力規制庁前長官の安井正也特別国際交渉官は、上ぶたの取り外しが難しく、保管する場所すら困るとしている。

◆2号機で「ベント」一度も成功せず

 事故から10年、廃炉だけではなく、全容解明の道のりはまだ長い。これまでに政府、国会、東電、民間の4つの事故調査委員会が報告書を出し、これとは別に規制委も14年10月に調査結果をまとめている。
 現場の放射線量が下がり立ち入りできる場所が増え、調査チームは19年9月以降の結果について、26日に2回目の報告書案としてまとめた。調査では、2号機で格納容器内の圧力を下げるために汚染蒸気を排出する「ベント」が一度も成功しなかったことなども確認した。
 それでも調査には限界がある。国会事故調だけが地震で重要機器が損傷した可能性に触れたが、今回はテーマになっていない。調査チームの安井氏は「分からないことはいっぱいあり、調査は続ける。膨大なビデオや写真を、われわれ以外も使える公共財として残していければ」と話した。

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