ファンが直接選手に寄付する「スポーツギフティング」 スポンサー離れの救世主に!?<スポーツの力・アスリートと共に②>

2021年1月27日 10時00分
 こんな時だからこそ、その価値はより高まるかもしれない。ファンがアスリートを直接、経済的に支援できる「スポーツギフティング」。コロナ禍によるスポンサー離れで苦しむスポーツ界にとって、救世主とも言える新たな試みだ。事業を手掛ける一般財団法人「アスリートフラッグ財団」事務局長の松崎貴宏さん(40)は、東京五輪でスポーツやアスリートに注目が集まることで、「ギフティングの認知度を広げる重要な機会。選手を支える方法になれば」と期待する。

◆選手の活躍が「自分ごと」になる

「アンリム」でアスリートを支援する武本泰伸さん(左)と松崎貴宏さん=東京都渋谷区で

 財団はインターネットサービス「ミクシィ」に運営を委託した「Unlim(アンリム)」を昨年2月に始めた。インターネットを通じてファンが個人で、登録する選手やチームに低額から寄付できるシステムだ。
 日本ではなじみがない選手への寄付の文化は、スポーツ大国の米国ではインターネットが普及する前から一般的だったという。「寄付した選手が活躍すれば、ファンは『自分ごと』として喜びをより身近に感じる。スポーツへの熱量が、もっと増えてくれればと思った」と松崎さんはアンリムを始めた理由を語る。
 ファンが寄付をしようと思うのはいいプレーを見たり、それで元気づけられたりした時。だが、アンリムがスタートしたころにちょうど、コロナ禍が拡大した。「試合をきっかけにした寄付は期待できなくなった」とミクシィのスポーツギフティング部長、武本泰伸さん(45)は振り返る。

◆コロナ禍で競技人生を支えるシステムに

 一方で「コロナで選手が苦しんでいるからこそ、より応援しなければ」という動きもあったという。コロナ禍で資金不足に陥り、競技を続けることすら難しくなった選手を支えたいという寄付が増えた。その一例が、フェンシング男子の三宅諒(フェンシングステージ)への支援だ。
 三宅は、感染症拡大の影響で東京五輪などの試合が激減して力量を示す場がなくなったとの理由で、自らスポンサーとの契約を保留した時期があった。収入は断たれ、食事宅配サービス「ウーバーイーツ」でアルバイトを始めて話題にもなった。そのころ、アンリムに登録。すると多くの支援が寄せられ、現在は50人以上から寄付を受ける。
 スポンサー収入だけで生活できる選手は多くはない上、コロナ禍でスポンサー自身も苦しんでいる。その状況で「全てをまかなえるかは分からないが、少しでも(ギフティングが)プラスアルファになれば」と武本さん。スタート時で10人ほどだった登録選手は、いまや100人超。好プレーに対する「投げ銭」のような効果を期待されたサービスが、選手の競技人生そのものを支えるシステムとしても裾野を広げつつある。

◆声援やファンレターのように…応援の一手段に

 ギフティングには、クラウドファンディングのような選手から支援する側への見返りはない。それでもこのシステムが成立するのは、選手の活躍する姿、言葉や生き方から、ファンが希望や元気などスポーツが生み出す前向きな力を受け取っているから。だから「アスリートも、成績と同じくらい、自身の情報を発信することが大事」と松崎さんは強調する。
 東京五輪が開かれなくても、ギフティングは選手とファンとの関係の新たな潮流となるかもしれない。武本さんは「声援やファンレターのように、応援の一手段として根付く形を目指したい」と力を込める。 (対比地貴浩)

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