広島で被爆しても「いい芝居を」…全員死亡した劇団「桜隊」の悲劇をホームページに

2021年1月27日 18時00分
 第2次世界大戦末期、公演中の広島市で原子爆弾に被爆し、メンバー9人全員が亡くなった国策の移動劇団「桜隊」の悲劇を語り継ぐ活動をしている「移動演劇桜隊平和祈念会」(事務局・東京都中央区)がホームページ(HP)を開設した。取りまとめ役の劇作家榎本明仁さん(45)は「コロナ禍で活動が難しいが、ステイホームの機会に若い人たちに知ってほしい」と呼び掛けている。(岩岡千景)

「移動演劇桜隊平和祈念会」のホームページ。トップページには亡くなった所属俳優9人の写真が掲載されている

◆国策で結成

 桜隊は、演劇を通じた戦意高揚のために内閣情報局が主導して結成された。20~40代の若手、中堅俳優で構成し、出身母体も新劇、宝塚歌劇団、映画会社の日活など多彩だった。
 代表的なメンバーに、戦前を代表する新劇俳優で幅広い役柄を演じ「新劇の団十郎」と呼ばれ隊長を務めた丸山定夫(1901~45年)、元宝塚スターで、43年公開の大ヒット映画「無法松の一生」でヒロインを演じた園井恵子(13~45年)らがいた。

◆地方巡演中の広島で

 東京で空襲が激しくなったため、地方を巡演していた45年8月6日朝、広島市の宿舎で被爆する。5人が即死。丸山は被爆に苦しみながら、敗戦の報を聞き「いい芝居をやりましょう」と言いながら16日に死亡した。
 隊員の高山象三は20日、園井は21日に死亡。仲みどりは帰京したが24日に東京帝大病院で死亡し「原爆症第1号患者」となった。
 丸山と同じ劇団に所属したことがある俳優徳川夢声(1894~1971年)の呼び掛けで戦後、東京都目黒区の五百羅漢寺に慰霊碑が建てられ、毎年、追悼法要が営まれてきた。劇団関係者らでつくる「桜隊原爆忌の会」が法要に合わせて追悼会もしてきたが、メンバーの高齢化などで継続が困難に。

新たに「桜隊」として演劇などの活動をしていく3人。左からこはるさん、隊長の椎名友樹さん、磯谷雪裕さん=埼玉県川越市で(移動演劇桜隊平和祈念会提供)

◆若手も加わり、再び

 このため昨年、若手も加わり祈念会へと組織を刷新。「桜隊」の名で俳優3人による劇団を新たに結成し、戦争をテーマに公演しつつ桜隊を語り継ぐことにした。
 新しい桜隊隊長で俳優の椎名友樹さん(45)は「最後まで演じることを捨てなかった気持ちを継ぎたいと参加した。コロナ禍が思いのほか長く続き、見えない恐怖と闘い、自由に活動できない今の状況は当時と重なると感じる。今夏の公演を目指し、平和や幸せについて考えるような芝居をしたい」と見通す。

◆海外にも発信

 HPは、英語でも桜隊を紹介。新たな桜隊の公演などの情報も載せていく。遺族や演劇関係者らが寄せてきた活動支援の協賛金(寄付)を一般から募ることにし、口座も案内している。
 榎本さんは「今後、フランス語や中国語などでも紹介し、海外にも広く平和を訴えていきたい」と強調している。

関連キーワード


おすすめ情報

社会の新着

記事一覧