<新型コロナ>医療体制逼迫…救急患者の受け入れ先が決まらない「搬送困難」横浜・川崎市で急増

2021年1月28日 07時37分
 新型コロナウイルスの感染拡大で医療体制が逼迫(ひっぱく)する中、救急患者の受け入れ先がなかなか決まらない「救急搬送困難事案」が相次いでいる。本紙は神奈川県内の二十四消防本部に取材。感染者の多い横浜、川崎市で急増し、他の地域でも「なかなか決まらない」という声が上がった。他県では受け入れ先がすぐに決まらず搬送中に患者が心肺停止となる事案が出ているが、県内でも綱渡りの実態が浮かぶ。 (杉戸祐子、安藤恭子、曽田晋太郎)
 横浜市消防局によると、市内の直近一週間(十八〜二十四日)の困難事案は二百十九件だった。前週より六十一件減ったが、前年同時期の週(五十件)の四・四倍、昨春の緊急事態宣言期間に最も多かった五月四日からの週(百二十件)の一・八倍となった。今月には三十一回照会して決まった例もあったという。
 担当者は「全体の九割以上は困難事案に当てはまらず、約八割は一回の照会で搬送先が決まる」と前置きした上で、「新型コロナの疑いがある場合、受け入れ先が限られ、見つからないケースが出る」と話す。
 川崎市内の直近一週間は前週と同じ八十五件で、昨年十一月二十三日の週(二十件)の四・三倍。このうち現場滞在時間が一時間以上となったのは二十九件あり、うち六割は患者に発熱症状があった。市消防局の担当者は「新型コロナ疑いと判断され、中小病院の受け入れが困難になったことが要因として考えられる」と話す。
 自宅や宿泊施設で療養中のコロナ患者からの救急搬送要請もあり、受け入れは「時間との勝負」。ただ、今年に入り市内の公立・民間病院が受け入れ病床を増やした経緯もあり「この一週間は遠方ではなく、市内の病院にだいぶ運べるようになった印象がある」という。
 相模原市の直近一週間の困難事案は、搬送件数全体の4%に当たる二十三件。昨春の緊急事態宣言期間中の最多件数(四月二十七日からの週、二十二件)と同じ水準だが、新型コロナ拡大前とほぼ変わらない状況という。市消防局は「感染拡大に伴って特に搬送が困難だった事例は発生しておらず、救急隊の活動にも支障は出ていない」としている。

◆小田原・秦野の消防本部でも「なかなか決まらない」

 横浜、川崎市ほどではないが、搬送先がすぐに決まらないケースは各地で起きている。一方で、今のところ影響が出ていない地域もある。
 秦野市消防本部は「搬送先がなかなか決まらない」と回答した。今年に入ってからの救急搬送五百六十一件のうち十三件は救急隊の現場滞在時間が三十分以上だった。小田原市消防本部も「搬送先がなかなか決まらない」と回答した。
 逗子市消防本部では二十一日、新型コロナで自宅療養中に血中酸素飽和度が90%を切った八十代女性の搬送先が決まるのに現場到着から一時間七分かかった。酸素飽和度は通常は98〜100%で、93%以下が呼吸不全の状態に近いとされる。加えて、県央地区の搬送先に到着するまでさらに一時間ほどかかったという。
 横須賀市消防局では困難事案は昨年十二月に約十件、今年一月はこれまでに約十五件あったという。
 藤沢市消防局では昨年十一月末から今年一月三日まで搬送困難事案はなかったが、それ以降に八件あった。
 茅ケ崎市消防本部では昨年二〜十二月に五件。今年に入って三件で、うち二件は患者が発熱していた。
 寒川町消防本部では医療機関に四回以上照会したケースは昨年一月以降に六件。コロナ疑いの事例はなかった。
 その他の消防本部は「決まらないという報告はない」などと回答した。 (西岡聖雄、石原真樹、村松権主麿、吉岡潤)
<救急搬送困難事案> 総務省消防庁は(1)医療機関に受け入れが可能かどうかを4回以上照会(2)救急隊の現場到着から搬送開始まで30分以上かかった−の両方にあてはまる事例と定義。全国52の消防本部から毎週報告を受け、県内では横浜、川崎、相模原の3政令市が報告している。

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