トランプ氏のアカウント凍結で気づいた「手のひらの上の自由」 水谷瑛嗣郎・関西大准教授

2021年1月28日 19時21分
<プラットフォームと「表現の自由」>㊤
 「暴力の扇動」を理由に、米国のトランプ前大統領のツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)アカウントが凍結され、ネット上の「表現の自由」を巡る議論が高まっている。プラットフォームという新たな権力とどう向き合うのか。SNSという言論の場の自由や健全性は、誰がどう守るべきなのか。識者に聞く。(聞き手・小嶋麻友美)
 ―トランプ氏のツイッターはどんな「場」だったのか。
 ただの私的なアカウントではなく、裏には担当官もいて戦略的、組織的な政府の広報装置として使われてきた。多くの人々がここで発信される情報に触れ、返信によって直接反論もできる公共的な場でもあった。その半面、支持者を扇動する誘導装置にもなり得る。
 情報のコントロールも権力作用の一つ。ネットによって政府はマスメディアを介さず力を使えるようになったが、今回はプラットフォーム(PF)がそれに対抗した形だ。死者も出る事態でPFがポリシーに従って行動したことは否定されるべきではないが、同時に、一国の大統領をだまらせられるPFの権力に、私たちは気づいてしまったということだ。
 ―国民や国とPFとの関係はどうあるべきか。
 憲法学は権力をしばること、乱用させないことを意識してきた。表現の場の多くは今、デジタル空間にあり、それをデザインしているのがPF。私たちはネットやSNSで「表現の自由」を手に入れたように見えるが、それはPFの「手のひらの上」の自由だ。今回トランプ氏に向いた力は、私たちにも向けられる。
 警戒しなければならないのは、この力が民主政治を揺るがしかねないことだ。PFの経営陣は民主的に選出されたわけではなく、ビジネスで有利に働くように、政府や政治家への「圧力」として乱用することがないと言い切れない。政治家もこの力を無視しきれないだろう。

水谷瑛嗣郎・関西大准教授(本人提供)

 国家と個人の間にあるPFという権力体を、どうコントロールするか。法律も駆使して、事後検証の仕組みを取り入れるなど、PFの「透明性」を高めることがまずは肝心だろう。
 ―日本にとってはPFの多くが海外企業だ。
 ツイッター社は米国の政治体制には責任を果たそうとするだろうが、彼らにとって外国の日本に、同様のインセンティブが働くだろうか。民主政には縁遠い中国の巨大PFにも、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」のように日本社会に浸透しているものがある。現代のデジタル空間は、国境を越えて私たちに影響を及ぼす権力がたくさんある複雑な構造だ。PFに日本の民主政に責任を担ってもらうため、法によるコントロールは不可欠だ。
 これまで国家が表現の空間に入ること、特にコンテンツ規制には警戒が必要とされてきた。今後は政府にも、言論空間の環境を整えるような役割がより求められるだろう。

みずたに・えいじろう 専門はメディア法、憲法。2019年から現職。共著に『憲法のこれから』『AIと憲法』など。

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