<お道具箱 万華鏡>狂言「塗附」 謎のテントも登場

2021年1月29日 07時00分

「旅風呂」を持つ三宅右矩さん(右)、近成さん

 四角い箱から次々に道具が出てくる狂言がある。丸い器に刷毛(はけ)、白い封筒、そして謎の花丸模様のテントまで!? 「塗附(ぬりつけ)」という、塗師(ぬし)(漆の職人)が主人公の演目だ。
 狂言は見立てで表現することが多く、リアルな道具はあまり使わない。一体どんな道具なのか。能楽師和泉流狂言方の三宅右近(うこん)さんに話をきいた。
 この塗師、実はちょっと困った人だ。スピード仕上げでやりますよと、いかがわしい宣伝をしながら登場する。「『しかも上手です』なんて言いながら、出てくるんです。おもしろいですよね。この台詞(せりふ)が好きでね、これを言いたくて、やるわけですよ」と右近さん。
 長男の右矩(すけのり)さんと次男の近成(ちかなり)さんが、お目当ての道具が詰まった箱を運んできてくれた。大工の道具箱のようなシンプルな木の箱。これに棒をくくりつけて、飛脚のように肩に担いで運搬する。この箱は、肩箱(かたばこ)というそうだ。
 舞台なので、本物の漆は出さず、塗る真似(まね)をする。漆を入れる丸い器は、立派な曲(ま)げ物細工。刷毛は舞台用に作られた木の板で、毛先の部分は色が塗ってあるだけ。「客席から見えやすいように、大きめに作ってあります」と右近さん。後日、右近さんが塗師を演じる舞台を見たが、ニセモノとわかっていても刷毛の先に毛があって、それがしなっているように見えた。使う人の技量なのだろう。
 さて、謎のテント。これは大きな和紙の袋で、漆を乾かすための装置「旅風呂(たびぶろ)」として登場する。漆は湿度がないと乾かないという不思議な性質がある。これで覆って乾かそうというわけだ。なぜこんなに大きいのかは、見てのお楽しみ。
 「塗附」は、二月十九日に東京・国立能楽堂で上演される。漆にまつわるこれらの道具にもご注目を。(伝統芸能の道具ラボ主宰・田村民子)

狂言「塗附」の道具。烏帽子(えぼし)(右上)の漆の塗り直しが話の筋。肩箱(左)、刷毛、漆を入れる器(手前)、との粉を入れる封筒(右)


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