公共的な民間ビジネスという矛盾 曽我部真裕・京都大大学院教授

2021年1月29日 20時24分
<プラットフォームと「表現の自由」>㊥
 ―プラットフォーム(PF)がトランプ前大統領をSNS(会員制交流サイト)から追放した。この対応をどう考えるか。
 トランプ氏の投稿をこれまで放置しながら、今回、アカウントを永久停止したことについて、「一貫性を欠く」という批判があるが、現職か否かは区別されるべきだ。国民には現職大統領の言動を知る権利があり、単にアカウントを停止すれば、国民は政治的に評価するすべを失う。アカウント自体は生かしてきたこれまでの判断は妥当と言える。

曽我部真裕・京都大大学院教授=本人提供

 他方で、今回の措置は適正な手続きを経ず、過剰な規制だという批判がある。停止の基準はあいまいで、事前にユーザーの言い分も聞いていない。公権力が同じやり方で「表現の自由」を規制すれば憲法違反だ。
 PFやSNS事業者は、ネット上の「表現の自由」の実質的なあり方に影響力を持っている。しかしあくまで民間企業で、サービスの仕様は原則自由に決められる。実態は公共的だが、民間ビジネスであるという矛盾した性格をどう考えるか。強大な存在になったことで改めて問われている。
 ―矛盾はどう解消するべきなのか。
 これまでは国と国民という二極構造で、国による「表現の自由」の規制が許されるかという議論の図式だった。今はPF、ユーザー(国民)、国の三極構造。PFが実質的にユーザーの「表現の自由」を規制しており、国がこれにどういう立ち位置で関わるか。法律でPF事業者の振る舞いを規制する方法もある。ヨーロッパ、特にドイツなどは積極的で、メルケル首相も今回、PFを批判した。日本でも将来、法的な規制に動く可能性はある。
 ―日本でもPF規制の議論が高まりつつある。
 日本で来月1日に施行される「デジタルプラットフォーム透明化法」は、楽天やアマゾンなど商取引のPFと出店事業者の関係を規定するものだ。個人情報やプライバシーの領域では公正取引委員会がすでに独禁法適用に動き、ここ2、3年でPF規制が進んできたが、表現の領域ではまだない。
 一方、誹謗ひぼう中傷対策では昨年、総務省の研究会が対策をまとめたが、立法の動きには至っていない。あくまで、民間事業者の自主的な取り組みに期待するというものだ。
 ―自主団体「ソーシャルメディア利用環境整備機構」の取り組みは。
 投稿削除などで統一的な基準づくりが必要だと言われることもあるが、SNS各社で立ち位置は違う。さらに多くが外国企業で、基準を変えるのも難しいのが実情だ。

そがべ・まさひろ 2013年から現職。SNS事業者らで昨年設立した一般社団法人「ソーシャルメディア利用環境整備機構」代表理事を務める。

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