<食卓ものがたり>まろやか 200年超す味守る 粕酢(愛知県半田市)

2021年1月30日 07時11分

粕酢を造る発酵室の様子。中に入れるのは製造担当者だけ=愛知県半田市で

 濃いあめ色が目を引く。口に含むと豊かな香りに、ほのかな甘み。酢特有のつんとした酸味がほとんどない。食品メーカー「ミツカン」(愛知県半田市)が作り続ける粕酢(かすず)「三ツ判(みつばん) 山吹」だ。
 歴史は江戸後期にさかのぼる。ミツカンの創業者、初代中野又左衛門(一七五六〜一八二八年)は酒造業を営んでいた。酒造りの工程で大量に出るのが酒粕。「畑の肥やしくらいしか使い道がなかった」とミツカンミュージアム(同市)の村瀬寛祐(ひろすけ)館長(58)は言う。
 そこで目をつけたのが、江戸で流行していた、なれずしに似た「半なれずし」だ。米酢などをふりかけて作っていたが、米酢は高価だった。「酒粕で酢を作れば、その方が安い。味もまろやか」という勘は当たり瞬く間に受け入れられた。
 「山吹」は、二代目又左衛門が考案した。原料の酒粕を三年間置いて熟成させることで、ほのかな赤みを帯びた粕酢が完成した。商品名の「山吹」は、その色から来ている。半なれずしに続き評判になった今のすしの原型「早ずし」の酢飯に使われ始めると、「これ一本で食材のうまさを引き出すことができると、人気を呼んだそうです」。
 看板商品「山吹」は、昔と同じように三年寝かせた酒粕を水で溶かした後、酵母を加えてアルコールの状態に。そこに酢酸菌を植え、十〜十四日間をかけて発酵させる。
 発酵には多くの空気が必要。機械などで上下にかきまぜれば効率的だが、おけの中で自然に対流させる。生産に携わる生産物流本部の小田峰裕(たかひろ)さん(44)は「夏は暑すぎないよう、冬は寒すぎないよう気を使う」と力を込める。二百年以上ずっと変わらない味わいは、作り手が丹精込めた証しだ。
 文・写真 長田真由美

◆作る

 「三ツ判 山吹」(900ミリリットル、1080円)で酢飯を作るときは、砂糖を控えめにするのがポイントだ。手まりずし=写真、ミツカン提供=は同社ホームページ(HP)で紹介されているレシピの一つ。
<1>米2合を水360ミリリットルで炊く
<2>山吹90ミリリットル、砂糖大さじ2、塩小さじ1を合わせて煮立たせないようにして火を通したら、ご飯にかけて酢飯を作る
<3>酢飯を30グラムずつラップにのせてひねり、丸く形を作った後、タイ、エビ、イクラなど好みの食材をのせて完成。
商品の注文など問い合わせはHP=「ミツカン お客さま相談センター」で検索=から。

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