SDGs 危機の時代の羅針盤 南博、稲場雅紀著

2021年1月31日 07時00分

◆議論が生む世界の潮流
[評]湯浅誠(社会活動家・東京大特任教授)

 現役官僚とNGO活動家。この二人の著書であるという事実が、SDGs(エスディージーズ)(持続可能な開発目標)の何たるかを表している。つなぐもの、だ。本書は、十七のゴールと百六十九のターゲットをもつ国連SDGsの多面的な中身や思想を網羅的に扱いながら、とりわけその「つなぐ」側面を意識して書かれている。実際SDGsがあって、私のようなNPOの人間と大企業の役員が同じピンバッジをつけて出会うといったことが世界中で起こっている。
 SDGsがつなぐものは多様だ。まず課題と課題をつなぐ。人類が地球規模で直面している重要課題(たとえば気候危機や貧困・格差)がどのようにつながっているのか、その相関図が随所で示される。地域と世界をつなぐ。岡山市や鳥取県智頭(ちづ)町の試みがいかに「世界的」か、SDGsを介すると見えてくる。人と人をつなぐ。アフリカの保健問題に取り組んでいた著者(稲場)が智頭の林業者と山林を歩くように、ニューヨークの国連本部にいた著者(南)が東ティモールの人々と海辺のゴミ拾いをするように、異なる地域・分野の人たちを結びつける。二人の著者を結びつけたように。それらを通じて、個人と世界をつなぐ。自身の労働問題に直面する外国人が、自らの権利回復には持続可能な世界を作るための公共性があるのだと知る。地元地域の高齢者の移動を確保することが世界を支えることだと知る。
 そうして人々の背筋を伸ばし、人々を集わせ(「コンビーニング・パワー」と言うらしい)、異質な者同士の侃々諤々(かんかんがくがく)の議論から世界が向かうべき潮流を生み出していく。そもそも、そうして生み出されたのがSDGsなのだと、南の証言も読ませる。
 そしてコロナ禍においても、SDGsの羅針盤としての価値は失われないのだと強調する。危機は、取り返しのつかない、かけがえのない、エッセンシャルなもの(地球環境や命)を浮かび上がらせる。二〇二〇年の危機を「行動の十年(二〇二〇年代)」へとつなげられるか、それは私たちがSDGsにつながるかにかかっている。
(岩波新書・902円)
<南博> 外務省職員。2012年から15年にかけて政府の首席交渉官としてSDGs交渉を担当。
<稲場雅紀> 02年からNPO法人アフリカ日本協議会でエイズ、保健分野を担当。

◆もう1冊

蟹江憲史著『SDGs(持続可能な開発目標)』(中公新書)

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