刑事罰の削除 実効性になお疑問残る

2021年1月30日 07時17分
 新型コロナウイルス対策の特別措置法などの改正案が審議入りした。与野党の修正協議で刑事罰が削除された代わりに、行政罰が導入された。罰則を伴う対策に実効性があるのか、なお疑問が残る。
 政府が閣議決定した感染症法改正案には、入院を拒否した感染者に「一年以下の懲役か百万円以下の罰金」を科す罰則が盛り込まれていたが、自民、立憲民主両党は修正協議で、懲役刑を削除し、刑事罰の罰金も行政罰の過料に改めることで合意した。
 入院ができない事情がさまざま考えられる中での刑事罰適用は、人権問題にもなりかねない強権的な対応だ。人権に最も配慮することが求められる感染症法の理念に照らしても、削除は当然である。
 一方、行政罰の過料が妥当かどうかは、さらなる議論が必要だろう。罰則を科すことには変わりはないからだ。
 政府は入院拒否が感染を広げている具体的な事実や、罰則が感染拡大の防止に効果があるかどうかの根拠を示していない。国会審議の中で示す必要がある。
 特措法の改正案にある罰則導入も同様だ。
 営業時間の短縮などの要請に応じない事業者に対し、緊急事態宣言下では五十万円以下、宣言が出される前の「まん延防止等重点措置」の場合は三十万円以下の過料を科す罰則についても、金額を引き下げることで合意した。
 雇用を守り、経営を維持するために、営業せざるを得ない事業者は少なくない。額が下がったとはいえ、罰則はさらに追い詰めることにならないか。
 むしろ必要なのは、営業自粛に応じて経営を支える支援策だ。改正案は、行政に経営支援を義務付けたが、制度やルールはあいまいなままだ。これでは事業者には支援の中身が分からず、営業自粛に応じにくいのではないか。
 政府は営業自粛による損失補償を固く拒んでいる。事業者ごとの損失把握が困難な上、一律給付する協力金より、多くの財源が必要になるからだ。
 しかし、事業規模によって損失額が違う以上、実態に即した支援が必要だ。優先して検討すべきは罰則の導入ではなく、事業者への具体的な経営支援策ではないのか。
 今回の改正案が成立しても、新型コロナの感染拡大がすぐに収まるわけではなく、引き続き有効な手だてを検討することが必要だ。政府も与野党も、気を引き締めて国会審議に当たらねばならない。

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