「社会に役立っている」利用者が生きがい実感 親が行きたくなる介護施設目指す

2021年1月30日 13時00分

利用者とふれあうSOMPOケア宇都宮さつきデイサービスの所香代子さん=6日、宇都宮市で(市川和宏撮影)

 折り鶴が最後まで折れなければ、最初の三角折りだけでもいい。手指がうまく動かせない人には千羽鶴の配色を決めてもらう。宇都宮市のデイサービス(通所介護)施設では利用者それぞれの能力に合わせた地域貢献活動やリハビリを提供している。管理者を務める所香代子さん(43)が目指すのは「利用者が社会に役立っていると実感できる、自分の親が行きたくなる施設」だ。(小形佳奈)

◆「雑巾縫う?」「布を切って」作業する利用者

 1月初旬、市内南部の住宅街にある、平屋建ての「SOMPOケア宇都宮さつきデイサービス」では、昼食後の光景が繰り広げられていた。
 飛 沫防止のアクリル板を片付ける人、ふきんで机やいすを拭く人。脊髄小脳変性症で要介護5の女性(51)は職員に支えられ、食器の載ったお盆を下げた。

マウスシールドを作る利用者=宇都宮市で(市川和宏撮影)

 施設は午前9時半から午後4時半まで開所。介護保険を利用する50代から90代までの人たちが、1日約10人利用する。所さんは利用者を回り、「雑巾縫う?」「布を切って」と、午後の作業を決めていく。

◆「幼児のように扱う」イメージにちゅうちょ

 栃木県小山市内の福祉専門学校を卒業し、高齢者介護の会社へ2002年入社した。07年、訪問介護担当からデイサービスへの異動を打診され、一度はちゅうちょした。一斉の合唱や、手遊びなどの様子が「老人を幼児のように扱っている」イメージがあったからだ。しかし「自分で変えればいい」と上司に言われ、チャレンジする気持ちになった。
 着任すると、脱いだ靴の出し入れや、うがいのコップに水を入れるのも職員がやり、日常生活を送るのに必要な能力まで奪いかねない心配があった。1日中、車いすに乗ったままの利用者の姿も気になった。一つずつ変えていった。

利用者たちが作った馬のおもちゃ=宇都宮市で(市川和宏撮影)

 配膳や洗濯物畳みなど、できることをやってもらった。車いすの利用者は、自分でストッパーを外し、車輪を操作できるようになるまで辛抱強く見守った。

◆利用者自身の生きがいにつなげる

 「このデイは何も手伝ってくれない」。利用者からは苦情も出たが「利用者自身が社会に役立っているという思いが生きがいにつながる」と10年前から地域貢献活動にも取り組んできた。
 利用者が、近所のパン店や職員行きつけの居酒屋に、折り紙で作ったおみくじやようじ入れを届けている。新型コロナ感染が広がった昨春以降は、マウスシールドやマスクの製作に挑戦している。
 施設を運営するSOMPOケア(本社・東京都品川区)では日常生活上の動作を利用者にやってもらうなど全国の運営施設で取り組んでいるが「所さんの施設ほどの徹底ぶりは珍しい」(同社広報部)。

利用者たちが折った千羽鶴=宇都宮市で(市川和宏撮影)

 利用者の家族からは「しっかり体を動かすから、よく寝るようになった」といった声が届く。今では利用者から「次は何をやらされるの?」と冗談半分で尋ねられるようにもなった。

◆お荷物じゃない「ありがとう」と言われる側で

 「年を取っても決してお荷物じゃない。『ありがとう』と言われる側でいてほしい」。親が行きたくなる施設に少しずつ、近づいている手応えを感じている。

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