「インドのワクチンが世界を救う」 インド産を周辺国に無償提供、ワクチン外交で中国に対抗

2021年1月31日 06時00分

27日、ネパールの首都カトマンズの病院で、インドから提供されたワクチンの接種を受けるネパール人医師=AP

【バンコク=岩崎健太朗】新型コロナウイルス感染症ワクチンの自国生産を始めたインドが、ワクチン確保が難しい国々への無償供与する「ワクチン外交」を展開している。累計感染者は米国に次ぐ1000万人超と深刻だが、周辺地域で存在感を増す中国に対抗する狙いもあり、安価なワクチンを武器に友好姿勢をアピールしている。
 「インドのワクチンが世界を救う」(モディ首相)、「世界の薬局としてコロナに打ち勝つためにワクチンを供給する」(ジャイシャンカル外相)。インドは政府のこうした号令の下、16日に始まった自国での接種から間もない20日からバングラデシュやブータン、モルディブなどアジアやインド洋の国々への無償提供を開始。「ワクチン・マイトリ」(ワクチンによる友愛)を掲げ、国の規模などに応じて200万~10万回分を届けている。
 なかでも中国が30万回分の無償提供を表明したミャンマーには、5倍の150万回分を寄贈。領土問題を抱えるネパールには100万回分を贈り、オリ首相から「自国民に接種を進める重要な時期に寛大な支援だ」と感謝の言葉を引き出した。
 インドにとってワクチン産業は世界シェアの6割を占めるお家芸。単価も200ルピー(約280円)ほどと欧米諸国に比べ格段に安価で、各国が今後の調達コストを抑えられるメリットもある。
 周辺のアジア各国では、中国が近年、巨額の投資や経済支援をテコに経済圏構想「一帯一路」を推進し、影響力を強める。また中国とは昨年から国境地域での領有権争いに端を発し関係が悪化しており、ワクチン支援が対中政策での巻き返しにつながるとの思惑もある。
 インドの政治・安全保障アナリスト、スダ・ラマチャンドラン氏は「コロナ対応に苦慮する途上国などへの積極的な協力は、中国の影響力を食い止める上で意義がある。ワクチンは強力なソフトパワーツールであり、インドが穏健な大国であると示し、信頼醸成に役立つだろう」との見方を示した。

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