渋谷発!IT企業が脱オフィス テレワーク普及で移転の流れが加速

2021年2月1日 06時00分

渋谷のオフィスビルに掲げられた「テナント募集中」の表示=東京都渋谷区で

 東京・渋谷の賃貸オフィスで空室が増えている。渋谷に多く集まるIT関連のベンチャー企業が、新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークに切り替え、オフィスの移転や縮小を進めているため。大規模な再開発に伴いIT企業が再び渋谷に集積する動きがあったが、コロナ禍で水を差された形だ。東京では電通などの大手企業も相次いで本社ビルの売却を検討し、オフィス環境が大きく変わりつつある。(原田晋也)
 インターネット広告の代理店「アド・プロモート」は昨年5月、本社を渋谷区道玄坂から栃木県小山市に移した。きっかけは4月の緊急事態宣言。約30人の社員の大半がテレワークに移行し、東京の事務所は引き払った。以前から、吉田英樹社長(50)の出身地の小山市にも事務所を置いていたが「東京にいないと仕事が取れない」と、渋谷を本社にしていた。吉田社長は「移転して家賃負担はなくなり、顧客との取引も減っていない」と話す。

◆空室率10カ月連続上昇

 渋谷に集まるIT関連のベンチャー企業は、パソコンがあれば仕事の場所を選ばず、小規模なため事務所の移転を決断しやすい。オフィス仲介大手「三鬼商事」によると、昨年12月の渋谷区のオフィス空室率は5・34%で、2月(1・87%)から10カ月連続で上昇。空室率は5%を超えると、オフィス需要が冷え込んでいる目安となる。
 都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の12月平均は4・49%で、渋谷と港が5%を超えている。港区はIT企業が多い上に大規模なオフィスが多く、大企業の解約が増えているという。
 渋谷は1990年代後半から、若者が起業したIT企業が拠点を構えるようになり、IT産業が盛んな米シリコンバレーになぞらえて「ビットバレー」と呼ばれた。2010年以降はオフィス不足や家賃の高騰で、グーグル日本法人やアマゾンジャパンなどが渋谷を離れた。このため、東急グループは渋谷駅周辺の再開発に合わせてオフィスを整備。19年にグーグルが渋谷に拠点を戻すなど、IT企業の回帰が進んでいた。

◆かつての「ビットバレー」が…「もう集積ないだろう」

 法政大大学院の真壁昭夫教授は「テレワークに移行しオフィスを移した企業はもう戻らない。かつてのビットバレーのように渋谷にIT企業が集積することはないだろう」とみる。
 コロナの感染拡大後、電通グループや日本通運、エイベックスが港区にある本社ビルの売却を検討するなどしている。テレワークの定着で必要性が薄くなったオフィスをなくし、財務基盤を強化する狙いがある。
 「不動産激変~コロナが変えた日本社会」(祥伝社)の著書がある、不動産コンサルティング会社代表の牧野知弘さんは「IT以外の業界もテレワークで仕事が成り立つことに気付いている。今後のコロナ禍の状況とは無関係に、都心の空室率は上がっていくだろう」と指摘する。

関連キーワード

PR情報