供給遅れのEUがワクチン確保に躍起 輸出規制策や製薬会社との契約書公開

2021年2月1日 06時00分

スペイン・バルセロナの病院で1月28日、新型コロナウイルスのワクチン接種を受ける医療従事者=ロイター・共同

 【パリ=谷悠己、ロンドン=藤沢有哉】新型コロナウイルス感染症ワクチンの供給が遅れている欧州連合(EU)が、ワクチン確保に躍起になっている。ワクチンの域外流出を防ぐための輸出規制策を定め、供給遅延を予告した製薬会社には契約書を公開してまで早期供給を迫った。露骨なワクチンの囲い込みに、世界保健機関(WHO)も懸念を強めている。

◆製薬3社はEU向け供給体制に課題

 「EUはワクチン製造に巨額を投資した。企業は供給責任を果たすべきだ」。フォンデアライエン欧州委員長は1月下旬、世界経済フォーラムでこう訴えた。
 EUは域内人口の3倍に当たる計15億回分のワクチン購入を製薬会社などと契約し、昨年末から加盟国で一斉接種が始まった。だが現時点で承認を受けている製薬3社はいずれも、27国分を一括で大量調達するEU向けの供給体制に課題を抱えている。

ベルギー北部プールスにある米製薬大手ファイザーの工場=共同

 最初に承認された米ファイザーは急な量産に対応するための工場改修で1月中旬に生産量を削減した。さらに、EUが最多4億回分を注文した英アストラゼネカの3月末までの供給予定が当初の4分の1程度にとどまる見通しと判明。ロイター通信によると米モデルナの供給も遅れる見込みで、ポルトガルやフランスなど接種計画の見直しを迫られた国が相次いでいる。
 そこでEUは、加盟国が自国内からワクチンを輸出する場合、事業者に製造量や出荷先の情報を確認した上で出荷許可を出す規制策の運用を先月30日から開始。製薬企業がEUとの供給契約を履行していないと判断すれば、域外への輸出差し止めを可能にした。EUへの供給を優先させることが目的で、日本など今後に承認を予定する国も影響を受ける可能性がある。

◆WHO幹部「世界的な努力を無駄にする」

 規制決定後、WHO幹部は仏メディアに「ワクチンを平等に流通させようという世界的な努力を無駄にする恐れがある」と嘆いた。
 当初の規制対象には昨年末の英国のEU完全離脱後もEU単一市場と同じ物品規則を採用する英領北アイルランドも含まれていたが、ジョンソン首相がフォンデアライエン欧州委員長に強く懸念を表明し、急きょ除外された。
 アストラゼネカは、ワクチンを先行承認した英国分を英工場で生産。EUは同社に「英工場で生産されたワクチンも(EUに)供給すべきだ」として1月29日の承認直前、供給予定量を記した契約書を公開した。31日の英BBC放送によると、ゴーブ英国務相は「最優先は英国民への接種だが、EUの友人らを助けるために協力したい」と発言。EUの「ワクチンナショナリズム」に歯止めをかける姿勢をアピールする狙いとみられる。

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