震災と協同労働 新たな働き方になるか

2021年2月1日 07時42分
 働き手が自ら出資し、運営する「協同労働」が法制化された。阪神大震災を機に存在感を増したボランティアの延長線上にある非営利活動で、新たな働き方や地域活性化の視点からも期待される。
 協同労働を認めた「労働者協同組合法」は二〇二〇年十二月の臨時国会で成立した。超党派による議員提案で、衆参両院とも全会一致での可決だった。
 協同労働は出資、経営、労働がいずれも同一メンバーであることが最大の特徴だ。社会や地域貢献を目的にお金を出し合い、共に働き、一人一票の議決権で経営もする。行政の許認可は必要なく法務局に登記できる。
 株式会社は一般的に株主、経営者、従業員がそれぞれ異なるし、同じ非営利団体でも、NPO法人にはメンバーらの出資が認められず、剰余金は事業の準備金などにしか充てられない。労働者協組なら、働いた分に応じて剰余金を分け合うことが可能だ。
 法制化を求めてきた各地の生協などは二二年末までの施行後、労働者協組へ移行するとみられ、多様な業種で新たな協組の設立も見込まれる。生協などの全国組織ワーカーズ・コレクティブネットワークジャパン(東京)の藤井恵里代表は「一人一人が労働を自治できるようになる」と説明する。
 一九九五年の阪神大震災では「市民の力」が広く認知され、三年後に議員立法でNPO法が成立した。市民団体は主務官庁の認可なしに福祉や災害支援、まちづくりなどの二十分野で法人格を持てるようになった。個人ではなく法人として銀行との取引や事務所の賃貸契約などが可能となり、長く継続した事業も容易になった。
 NPO法人はいまや五万超。二〇〇八年には社団、財団法人の設立も認可制から届け出制になった。非営利団体を支援する日本サードセクター経営者協会の後房雄代表理事(愛知大教授)は阪神大震災以降の流れを「多様な価値観が広がり、行政が市民活動を統制する時代が終わった」と総括する。
 非営利団体といえども、ちゃんと稼いで事業の継続や拡大につなげ、社会的使命と責任を果たすという考え方が浸透しつつある。東日本大震災の被災地などでは地域おこしや新たな働き方への模索も広がりそうだ。
 法制化に際しては経営や労働者の権利保護などを懸念する声があった。うまく社会に根付くのか、注視したい。

関連キーワード

PR情報