前代未聞の「パートで林業」が可能に 育児と両立の山づくり 森のようちえんの夢に奔走 協同労働の現場から

2021年2月1日 09時40分

ネクストグリーン但馬が実施した子供向けの自然体験イベント=2019年10月(ネクストグリーン但馬提供)

 兵庫県の北東部にある豊岡市は、面積の8割が森林で、国の特別天然記念物コウノトリの野生復帰の取り組みが今も続く。そんな地元の豊かな自然を守り、将来世代にまで引き継いでいこうと、協同労働で林業を営むのは「ネクストグリーン但馬(NGT)」だ。
 市中心部のJR豊岡駅から車で30分ほど山間部へ向かうと、山あいのそば屋だった家屋の一角にNGTの拠点があった。ワーカーズコープの組合員として働くメンバーは30~50代の5人。荒れた森林を間伐し、里山を維持するだけでなく、子どもが身近な森と触れ合うことができる自然体験イベントも開き、持続可能な森林づくりに取り組む。
 メンバーの1人で、地元の豊岡市出身の名城千鶴さん(38)は「ここがなければ、林業で働くなんて夢で終わっていたかもしれない」と語る。エステサロンでパート勤務をしていた名城さんは2014年、設立2年目のNGTが林業の職業訓練生を募集していると知って志願。趣味は山道のドライブで、いつか山に関わるような仕事をしたいと思い続けていた夢は、子育てしながらのパート勤務でもかなった。

◆兵庫・豊岡 子育てしながら間伐作業 「子どもたちを山に」の思い強く

 協同労働で林業を営む兵庫県豊岡市の「ネクストグリーン但馬(NGT)」に名城さんが転職を決めた当時、保育園児3人の子育て中だった。パートでしか働けないため、採用されないかもと諦めかけたが、NGTは名城さんの勤務条件を快く受け入れてくれた。
 働く時間は週3~4回、午前9時~午後3時まで。間伐作業は現場で一から学んだ。掘削機を使った作業道づくりは仲間が絶賛するほどの腕前に上達。スギやヒノキを切りながら「子どもたちを山に入れたい」との思いを強くした。
 そうした思いから、子ども向けのさまざまな自然体験イベントを企画。19年には豊岡市の子ども向け自然体験事業も受託した。森林組合に勤める夫は、休日のイベント運営に協力してくれた。
 その後、4人目を出産。今は育児休業が明けたばかりだが、これまでの実績を生かし、園舎を持たずに自然と触れ合う活動を通じて保育する「森のようちえん」の設立を目指し、準備に奔走している。

ネクストグリーン但馬の名城千鶴さん=兵庫県豊岡市で

◆多様な人材の連帯深まる 主体的に働ける協同労働

 NGTは若者の就労を支援する企業組合の日本労働者協同組合(ワーカーズコープ)連合会センター事業団但馬地域福祉事務所が「次世代に遺す山づくり」を実現するために設立した。
 地域の山林所有者に声をかけ、手入れが及ばず荒れる山の間伐を請け負う。購入や維持管理のコストが低い小型機械を使い、無駄な経費を抑えれば、採算性を取りやすく、未経験者が参入できて仕事おこしにつながるという狙いだ。
 現状の経営は赤字で、損失分は同じワーカーズコープに加盟する全国の仲間の黒字で支え合う。NGTの悲願の黒字化に向け、名城さんが目指す森のようちえんの設立は、主軸の森林整備と並ぶ要の取り組みだ。
 名城さんは「前代未聞の『パートで林業』をさせてもらえたのは、主体的に働ける協同労働だからこそ。子どもも大人も集まる森をつくっていきたい」と力を込める。
 ワーカーズコープ但馬地域福祉事務所の上村俊雄所長(35)は、労働者協同組合法の成立により「協同労働の取り組みが地域に広く理解され、多様な人材の参加や連帯が深まる」と、法制化の効果にも期待を寄せる。(坂田奈央)

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