存在感低下に焦る国軍の「暴挙」…国際社会も国民もそっぽでますます窮地へ ミャンマークーデター 

2021年2月2日 05時55分
 民政移管から10年。民主化の歩みを進めていたはずのミャンマーで1日、国軍がクーデターで政権を奪った。昨年11月の総選挙で国軍系政党が大敗し、存在感の低下に危機感を強めていたとみられるが、国際社会の非難に加え、国民の支持は得られず、窮地に追い込まれることは必至だ。(バンコク・岩崎健太朗)

1日、ミャンマー・ネピドーの道路で警戒に当たる兵士(AP=共同)

◆うわさは数日前から

 「国軍は何かを計画しているのではないか」。現地からの情報によると、ミャンマー国内ではここ数日、クーデターのうわさがあった。国軍は与党の国民民主連盟(NLD)が大勝した総選挙以降、30回近く記者会見を開き「有権者名簿に800万人以上の不一致があった」などと批判。選管が調査を受け入れないことに不満を募らせていた。
 連邦議会の開会を6日後に控えた1月26日、国軍報道官は「軍には憲法を守る義務があり、憲法に基づいて行われる選挙は公正で自由でなければならない」と発言。記者からクーデターの可能性を問われると「法律に従って進めるだけだ」と明言を避けていた。

◆改憲をめぐり攻防

 昨年11月の総選挙ではアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相率いるNLDが改選476議席中、396議席を得て圧勝。一方、国軍系の連邦団結発展党(USDP)は33議席まで減らし、退潮を印象づけていた。
 ただ、連邦議会の4分の1の議席はあらかじめ国軍に割り当てられ、国軍総司令官は国防相や内務相など重要閣僚の指名権もある。こうした軍政下の2008年に制定された憲法の重要規定は、議会の4分の3超の賛成が必要で、国軍系議員の協力がなければ改正できない仕組みだ。実際、昨年の議会でNLDなどが提案した軍の権限を弱める憲法改正案はことごとく否決され、影響力は保持していたはずだった。
 一方、スー・チー氏は国際的には少数民族ロヒンギャ難民問題で批判を受けながらも、国内人気は依然として高い。1期目で進まなかった国軍の政治関与縮小は直接口にしないものの、民主化進展に向け少数民族政党との協力を強化する姿勢を強く打ち出していた。

◆再選挙にも疑問

 国軍のクーデターに対し、国連や欧米各国は一斉に「ミャンマーの民主主義に深刻な打撃だ」と非難の声明を発表。ミャンマー人の政治アナリスト、モン・モン・ミャット氏は本紙の取材に「国軍が権威主義的な支配を取り戻そうとした動きだが、国民からはまったく受け入れられないだろう。国全体に痛手となることは間違いない」と懸念する。
 現地の分析では、今夏に退任する予定だったミン・アウン・フライン総司令官の後任を決める評議会の開催を巡り、軍とNLD政府に水面下のせめぎ合いがあり、影響力を残したい総司令官側が不利な状況にあったとされる。別の現地アナリストは「焦りを募らせた上での暴挙といえる。1年以内の再選挙をうたっていても、本当に実現されるか不明だ」と指摘した。

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