<かぞくのカタチ 選択的夫婦別姓制度を求めて>(下)事実婚 「家守るため」「絆壊れない」

2021年2月2日 07時24分

家名を守りたいという吉本麻里子さん=いずれも東京都内で

 法律婚を選んだ人が通称名で活動するときの「二つの姓」を使い分ける煩わしさを(上)(一月二十六日)で紹介した。では、事実婚を選択した人はどうなのだろう。
 東京都大田区の会社員吉本麻里子さん(54)は十七年間、事実婚を続ける。吉本さんは一人っ子。小学二年生で父、十九歳で母をそれぞれ病気で亡くした。
 母の実家の遺品整理をしていた時、吉本家の系譜に関する書類を数十冊見つけた。「吉本」は母方の姓。江戸時代に高名な国学者も出した家と聞かされていた。また家系図などを調べた結果、吉本家の跡継ぎが日露戦争で戦死し、祖父が養子として姓を継いでいたことも分かった。
 吉本姓を継いだのは母だけ。母の死後は吉本さんが残るのみ。「養子を迎えてでも守ってきた家名。絶やしてはならないという使命感が芽生えました」

家族の多様化について話す広沢満之さん

 結婚にあたり、夫も義父母も「妻氏婚でいい」と言ってくれた。でも「自分が嫌なことは相手にもさせたくない」。税制や相続で不利益になるのは承知していたが、選択的夫婦別姓はすぐに制度化されるだろうと考え、事実婚を選んだ。「まさかこんなに長く待たされるとは」
 昨年十二月も自民党慎重派の反対で、政府の男女共同参画基本計画から、選択的夫婦別姓の文言が削られた。反対派からは「(別姓を選べるようになったら)墓が守れない」という声もあるが、吉本さんは墓参りを絶やさず、自宅の神棚に手をよく合わせる。「別姓を望む人たちは先祖を敬わないと誤解されている」とため息をつく。
 「お墓の現場は既に家族の多様化が進んでいる」。東京都八王子市の寺の副住職でもある大学教員、広沢満之さん(44)は指摘する。
 広沢さんの寺の墓地でも、一つの「家」以外の人も入る合祀墓、寺に供養が委託された永代供養の墓が増えた。「結婚し改姓した一人娘が墓守りをする檀家さんも少なくありません」

別姓夫婦の子どもとしての思いを話す松浦将也さん

 広沢さんも事実婚。「姓は自分の大切な一部。結婚しても変えたくない」という妻の思いが理解できた。子どもは夫の姓。事実婚は親権が父母のいずれかのため、親権は妻にある。別姓の選択肢を認めれば「家族の絆が壊れる」との声もあるが、笑いの絶えない仲の良い家族だ。
 「子どもがかわいそう」との指摘については、事実婚の両親に育てられた都内の会社員松浦将也さん(25)も「(反対派は)実態を分かっていない」と意に介さない。「もちろんいじめなどの経験もない」
 松浦さんの両親は別姓を貫くため、出産後に離婚。小学四年の頃、多くの夫婦は姓が同じと気付いたという。友達から「お母さんと名字違うの?」と聞かれ、母に尋ねると「自分の名字を使いたかったから離婚しただけ。こうやって仲良く暮らしているでしょう」。母の説明に納得。その後は「うちはこういう家庭」と言えば済んだという。
 「人が幸せになるために政治や制度があるはず。選択肢を認めず、不幸な人をつくりだして何が良いのでしょうか」
 (砂本紅年、奥野斐)

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