認知症教室 患者も参加 国立長寿研が考案 家族と取り組み意欲刺激

2021年2月3日 07時38分

認知症教室で音楽エクササイズに取り組む小林勝征さん(左)と妻の照子さん=愛知県大府市で


 国立長寿医療研究センターもの忘れセンター(愛知県大府市)は、認知症の人とその家族がペアで参加する認知症教室のプログラムを作った。通常は家族介護者だけが対象で、患者を含めた体系的なプログラムは世界的にも珍しいという。認知症の症状改善などの効果を調べるため、受講するペアと、しないペアに分けた大規模な比較研究を四月からすることになり、参加者を募っている。 (大森雅弥)
 もの忘れセンターで昨年十二月に開かれた認知症教室「Petit茶論(プチさろん)」。九十分ずつ全六回の五回目で、五組の参加者が音楽を使ったプログラムに取り組んだ。
 「どんな歌手がお好きですか?」。講師で認定音楽療法士の三宅聖子さんが聞くと、愛知県安城市の小林勝征(かつまさ)さん(82)がすぐに「フランク永井」と返す。「低音でずっと長く歌ってくれると、気分がふわっとする」。その後も、多くの質問に積極的に答えた。
 教室が終わると、参加者は一人一人に与えられた「私のメモリーノート」に感想や気付いたことを書き込む。小林さんは整った字で「これからも歌をいろいろ入れてもらって、みんなで声を出せると素晴らしい」とつづった。
 小林さんは十年以上前から認知症の症状が見られ、要介護1と判定されている。妻の照子さん(77)は教室でノートが配られた時、「夫は何も書けないだろう」と思ったという。だが、小林さんは「自分のわがままを知らされた」と反省する文章も書くなど、驚くほどの能力を見せた。照子さんは「本当にうれしくなる。家に着く頃には教室のことは全部忘れているんですけどね」とほほ笑む。
 このプログラムを作ったのは、同センターの清家理(せいけあや)・外来研究員や桜井孝センター長、竹内さやか認知症看護認定看護師らのグループだ。もともと家族介護者向けに教室を開いていたが、「患者と一緒の方が参加しやすい」という家族らの声を受けて考案。昨年十月から試行的に実践を始めた。
 専門的には「心理社会的介入プログラム」と呼ばれ、成人学習の理論などを応用。さまざまな職種の専門家が多様なメニューと関与を行う。単なる座学ではなく、参加者の要望や現場のスタッフの意見を基に、クイズや音楽エクササイズ、笑いヨガなど、参加者が主体的に参加できる活動系の内容を中心にした。
 さまざまなコミュニケーションの機会も設けている。グループ学習ではペア同士の交流を促進。家族間では言いにくいことも話せるよう、患者と家族介護者が別々のグループで話し合う「分離の時間」もある。家でもメモリーノートを見せ合いながら家族同士で会話し、互いの理解を深める。
 昨年の実践では、ほかのペアがいることが刺激になって患者の意欲が高まり、最初は「楽しかった」と単語を並べるだけだった人が文章を書けるようになったり、表情が前より柔らかくなったりした。家族の抑うつ低減なども見られたという。清家さんは「手応えを感じている。比較研究で効果を実証したい」と話す。

◆比較研究に参加を

 比較研究は、4月21日スタートから来年5月11日スタートまで、10期間に分けて実施。各期間とも全6回の教室が国立長寿医療研究センターである。
 募集するのは、教室に参加する介入群の50組と、参加せずに定期的に資料送付と電話での聞き取りを受ける不介入群の50組の計100組。いずれも軽度認知障害か認知症の人(65〜90歳)と、その介護に当たる家族(20〜90歳)のペアが対象。参加無料。不介入群のペアは研究終了後、順次教室に参加できる。もの忘れセンターに電話・ファクス=0562(87)2515=か、メール=petit-salon@ncgg.go.jp=で申し込む。

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