香港・ウイグルの人権問題をめぐり欧米からボイコットの声も 北京冬季五輪で再び「スポーツと政治」懸念

2021年2月4日 06時00分
 北京で来年2月4日に開幕する冬季五輪まで1年。競技場などインフラ整備は順調に進むが、東京五輪・パラリンピックと同じく新型コロナウイルスが暗い影を落とす。さらに中国当局による香港や新疆しんきょうウイグル自治区への締め付け強化を受け、各国の人権団体、欧米政界から「ボイコットすべきだ」との意見も。「政治とスポーツ」の問題が繰り返される懸念もある。(北京・坪井千隼)

◆「スポーツに政治問題はNG」IOCバッハ会長がクギ刺す

 「五輪開催に向けた準備は万全だ。感染対策を厳格にして必ず成功させる」

1月18日、北京市内のフィギュアスケート会場を視察する習近平氏(中)=新華社・共同

 中国の習近平しゅうきんぺい国家主席は先月25日、国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長と電話協議し、自信満々に語った。バッハ氏は「IOCは五輪精神を守る」と応じて「スポーツを政治問題にすることには反対する」と述べ、五輪ボイコットの動きにくぎを刺した。
 ロイター通信によると、世界160余りの人権団体などは昨年9月、IOCに連名の要望書を送った。香港に同6月導入された国家安全維持法(国安法)による民主派弾圧、ウイグル族の強制収容など中国当局の人権侵害を非難し、北京五輪の開催撤回を求めた。
 英国のラーブ外相は昨年10月、「スポーツは政治から切り離されるべきだが、不可能になるかもしれない」とボイコットを示唆。1997年の香港返還で約束された「高度な自治」は国安法で踏みにじられ、国際社会にも失望が広がった。
 英政府は先月31日、旧宗主国として香港からの移民を受け入れる特別ビザ申請の受け付けを開始。今後5年のうちに約30万人が移住するといわれる。

◆米中対立がスポーツに波及か

 中国政府に対し、新型コロナ感染拡大の経緯に関する独立調査を求めるオーストラリアの連邦議会は昨年11月、英国と同じく人権侵害を厳しく批判、五輪不参加も議題にした。
 米国のバイデン新政権も人権問題に特別な関心を寄せる。ブリンケン国務長官はウイグル族迫害について「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と断言。米中対立の先鋭化がスポーツの祭典に波及しかねない情勢だ。
 中国外務省は「スポーツを政治化する試み」と猛反発。来秋に共産党大会を控え、長期政権を見据える習氏にとっては五輪成功が欠かせない。ようやく世界保健機関(WHO)の調査団を受け入れ、3日には米政府が感染源と疑う「武漢ウイルス研究所」の視察を許可したが、「感染源は輸入冷凍食品に付着したウイルス」との説を強調する。

◆モスクワ、ロサンゼルス…黒歴史繰り返すな

 一方、再びスポーツが政治に押しつぶされることに懸念が広がる。1980年のモスクワ五輪は、旧ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議する米国の求めに応じ、日本や西ドイツ(当時)など60カ国以上が不参加という苦渋の決断をした。
 柔道の日本代表だった山下泰裕氏(日本オリンピック委員会=JOC=会長)ら出場予定だった大勢の選手が涙をのんだ。逆に4年後のロサンゼルス五輪では東側の16カ国が報復ボイコットに踏み切り、国際社会に苦い教訓を残した。
 バッハ氏もモスクワ五輪で夢を絶たれた1人。フェンシングの西ドイツ代表として76年のモントリオール五輪で金メダルを獲得し連覇を狙っていたが、政治の壁に阻まれた。バッハ氏は昨年7月のIOC総会で「ボイコットは無益だ。選手やファンを苦しませるだけ」と振り返った。

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