ドライブインシアター 行く道は 密回避で注目も、ノロノロ普及

2021年2月4日 07時35分

昨年12月、スクリーンを取り囲むように並んだドライブインシアターの参加車両=東京都武蔵村山市のイオンモールむさし村山で

 コロナ禍で「ドライブインシアター」が各地で開催されている。かつて流行した車内で楽しむ上映スタイルが密の回避に有効として、映画に限らず多彩なイベントで活用されているが、年明けに出た緊急事態宣言は延長が決まり、新規開催に向けたハードルは高くなっているようだ。 (藤原哲也、藤浪繁雄)
 昨年末、イオンモールむさし村山(東京都武蔵村山市)の屋外駐車場。夜、四百インチのスクリーンを取り囲むように約六十台の車が並んだ。ディズニー映画「美女と野獣」(二〇一七年)が上映され、カップルや家族連れが楽しんでいた。
 主催のイオンエンターテイメントによると、系列の商業施設を活用して昨年七〜十二月に全国で約三百回上映し、約七千台を動員した。同社の新規事業部の久保野純也さんは「感染リスクが低いイベントとして、特にファミリー層から評価されている。車内は私的な空間なので、自由な鑑賞スタイルができるのも喜ばれている」と説明する。年明けも上映は継続している。
 米国発祥のドライブインシアターは、会場限定のミニFMで音声を流し、観客は車内のラジオから楽しむ。一九五〇〜六〇年代に米でブームとなり、日本でも九〇年ごろ人気となったが、レンタル店やシネコンの隆盛で消えていった。
 コロナ禍で昨年再び脚光を浴びた。昨年末には神奈川県横須賀市の長井海の手公園に、常設の施設も誕生した。イベントなどの運営会社が手掛ける「Do it Theater」の取り組みの一環としてオープン。アニメ映画「時をかける少女」(二〇〇六年)などを上映、約三百台が参加した。

昨年暮れ、さいたま市で開かれた「ドライブインライブ」の様子

 音楽ライブを軸にした開催例も増えている。昨年十二月にイオンモール浦和美園(さいたま市)であったイベントは、地元の有志グループが企画。例年は市場だったが、困難になったため、ソーシャルディスタンスを保てる「ドライブイン−」のイベントにした。音楽のほか落語や華道パフォーマンスなども登場し、観覧者はFMラジオからの音に反応し、パッシングやワイパーを作動させ、“ライブ感”を楽しんだ。
 トリを飾ったのが、「青いベンチ」のヒット曲がある埼玉出身の男性デュオ「サスケ」(北清水雄太、奥山裕次)。年間四十〜五十本ほどあったライブの仕事の多くを失った二人は、久々の生ステージを満喫するかのように熱唱した。北清水は「コロナは大打撃だが、エンターテインメントを届けたい気持ちはあるので、このような試みは大変ありがたい」と語った。
 上映は日没後に限られ、広い場所が必要なドライブインシアター。周辺への環境面の配慮から、アイドリングストップ(エンジン停止)を呼び掛ける主催者もあるが、寒さのためエアコンが必要で、徹底は容易なことではない。加えて、再度の緊急事態宣言で外出自粛ムードも漂い、開催に二の足を踏む業者もいる。
 「そもそも代替の方式であり、苦肉の策」と話すのは、都内のドライブインシアター機材のレンタル業者。昨夏から秋、中止となった祭りやイベントの代わりに多く企画されたが、「自治体が絡んだ行事が割と多く、民間ベースでは思うように収益が見込めない」とこの業者は実態を明かす。定着には工夫や斬新なアイデアが求められるようだ。

◆新たなサービス考えて

 ドライブインシアターでのイベント司会を経験した映画コメンテーターの有村昆(44)の話 ドライブインシアターはカーラジオを使うアナログ的手法だが、知らない世代にとっては新鮮な面があったと思う。基本的に観客の反応はパッシングしかないが、楽しめる空気感はあった気がする。課題は、広い敷地が必要なのと、映画館と違い飲食料品が売れないため、圧倒的に費用対効果が悪い。アイドリングストップの問題も、この寒さの中で呼び掛けて徹底させるのは難しい。協力者には、何らかのサービスや特典を与えるなど楽しみながらできる方式はどうだろう。
 車内では携帯電話が使えるため、上映中にSNSを使って、参加者同士がおしゃべりを楽しむなどのサービスの提供も思い付く。緊急事態宣言の延長で先は見通せないかもしれないが、コロナ禍は永久に続くわけではない。今後はさまざまな新たな試みが進化していくと思っている。

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