「香港から手を引け」中国政府圧力…人権派弁護士の資格剝奪相次ぐ

2021年2月4日 12時00分
 中国で人権派弁護士の冬の時代が続いている。当局から弾圧を受けている人々の弁護士を務めれば、弁護士資格剝奪などの圧力を受けるためだ。自身も資格剝奪の通知を受けた任全牛にんぜんぎゅう弁護士(40)は本紙取材に「人権派弁護士は30人程度まで減った」と話す。2015年7月の人権派弁護士ら一斉拘束事件の余波は今も残り、香港問題も試練となった。(北京・中沢穣)

◆「法廷の秩序」口実に

任全牛弁護士=本人提供

 任氏によると、1月4日に受け取った通知は、18年に弁護士を務めた非合法の気功集団「法輪功」関係者の裁判で、任氏が「法廷の秩序を乱した」などとして、弁護士資格を剝奪するとしている。
 しかし、任氏は「約2年前の事件であり、当局の口実だ」と指摘し、香港人の民主活動家ら12人が台湾への密航を試みて中国当局に拘束された事件が「本当の理由だろう」と話す。任氏は拘束された活動家の家族から依頼を受け、活動家への接見を求めていた。任氏とともに、この事件の弁護を引き受けた盧思位ろしい弁護士も資格剝奪の通告を受けた。
 任氏は「複数の司法当局者が『(香港の件から)手を引け』と何度も命令してきた」と明かす。しかし人権問題などにかかわってきた経験などから「まさか弁護士資格を剝奪されるとは思わなかった。それだけ当局がこの件を重視しているのだろう」と話した。

◆15年の一斉拘束の余波続く

余文生弁護士=許さん提供

 人権派弁護士への圧力は徐々に強まっている。15年7月には弁護士ら約300人が一斉拘束された。この事件は最初に拘束された王全璋おうぜんしょう弁護士(44)が昨年4月に出所して一段落したが、王氏の弁護士だった余文生よぶんせい弁護士(53)は18年1月から拘束が続く。香港の事件で資格を失った盧氏は、余氏の弁護も務めており、余氏の妻、許艶きょえん氏(38)は「(一斉拘束事件では)弁護士の弁護士の弁護士まで圧力を受けた」と憤る。
 さらに当局は16年以降、弁護士事務所などを管理する2つの法律の改正を受け、弁護士資格の剝奪や事務所閉鎖などの手段で圧力を強めるようになった。任氏によると、これ以降、弁護士は当局と対立する案件を引き受けにくくなった。任氏は、いわゆる人権派弁護士は「15年の一斉拘束事件前は100人前後はいたが、今は30人ほど」とみる。
 結果、当局の弾圧を受ける当事者にも、当局の意をくむ弁護士がつくことになる。任氏は「当事者の人権を守れなくなる」と話す。

◆拘束中、歯4本が抜け

 約3年前に拘束された余文生弁護士は1月14日、妻、許艶氏と接見した。拘束直後を除いてほぼ3年ぶりとなる接見は、江蘇省徐州の拘置所で別室の2人をテレビ電話でつなぐ形で25分間。許氏は本紙に「(余氏は)顔がとても白く、栄養が不十分なのでは」と心配を口にした。

1月14氏と接見のため訪れた許艶さん=許さん提供

 許氏によると、余氏は手錠をかけた状態で座らされ、接見の間も当局者に監視されている様子だった。健康状態は悪そうで、歯が4本ぬけ、前歯でしか食べ物をかめないという。さらに拘束されている間に右手の震えがとまらず、字が書けなくなった。許氏は「以前に拘束された際の拷問が影響したのだろうが、今回も拷問されたのではないか」と憂慮する。
 一方、許氏は「(接見が実現して)夫はやはりうれしそうだった。家族や支援者への感謝を繰り返していた」と振り返る。別れ際には互いに手でハート形をつくり見せあったという。
 許氏はこれまで月1回以上のペースで、北京の自宅から700キロ近く離れた徐州の拘置所を訪れていたが、接見は認められなかった。今回なぜ認められたか不明だ。
 昨年12月の二審判決は、懲役4年、政治的権利剝奪3年を言い渡した一審判決を支持した。判決前に拘束されていた期間も算入されるため刑期は来年3月1日までとなる。

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