<新かぶき彩時記>「飛梅伝説」から着想 「菅原伝授手習鑑」の三つ子

2021年2月5日 07時34分
 学問の神様、菅原道真で有名な「飛梅(とびうめ)伝説」。政変で九州・太宰府に追放された道真を慕い、屋敷の梅が一夜にして京の都から太宰府に飛んできたというもの。現在も太宰府天満宮の神木として飛梅が見られます。同様に邸内の松と桜も、桜は枯れ、松は別の場所に生えた故事を基に「梅は飛び桜は枯るる世の中に何とて松のつれなかるらん」という歌が後世に創作されました。
 この歌から着想されたのが「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」の三つ子である梅王丸、松王丸、桜丸。舎人(とねり)である三人は、梅王が菅丞相(かんしょうじょう)(道真)、桜丸が斎世親王(ときよしんのう)に、松王が敵方の藤原時平(ふじわらのしへい)に仕えています。実は松王は密(ひそ)かに道真に心を寄せており、時節を「まつ」という設定。道真追放の原因を作った桜丸は責任をとり、父・白太夫の隠居所で切腹します。ちなみに松王は三人のなかで上位の役者が演じますが、原作では梅王が長男で、道真の側に仕えるべく、飛梅よろしく太宰府に駆けつけるのです。
 兄弟が往来で偶然出会って争う「車引(くるまびき)」は、本作で最も華やかな場面。豪快な荒事様式で演じられますが、劇中では梅王が花道を飛ぶように引っ込む「飛六方(とびろっぽう)」を見せます。荒事の代表的演技ですが、他の演目で見られるのは「勧進帳」の弁慶と「国性爺(こくせんや)合戦」の和藤内など。飛梅からの連想も感じるような演出です。(イラストレーター・辻和子)

関連キーワード

PR情報

伝統芸能の新着

記事一覧