飛んでけ!コロナ 風通しに自信あり 伝統芸能の鑑賞や稽古

2021年2月5日 07時46分
 新型コロナウイルスの感染不安が続き、伝統芸能も鑑賞や稽古に二の足を踏む人も多い。しからば、密の回避やマスク着用、消毒など当たり前の対策に加え、「通気性に優れた」場所ならいかがだろうか。調べてみると「風通しに自信あり」という施設、空間は結構あるようで…。 (ライター・神野栄子)

◆日本舞踊 あちこちに窓

窓が多く、換気機能に優れた花柳佐栄秀(左端)の稽古場=東京都立川市で

 東京都立川市の日本舞踊家の花柳佐栄秀(はなやぎさえひで)(65)の稽古場をのぞくと、佐栄秀は弟子たちと隅田川の春の風情を描いた長唄「都鳥(みやこどり)」を稽古していた。
 昨夏に完成した二階建てれんが造りの一階稽古場は、舞台と床暖房付きで約四十畳。庭が見渡せる大きめの掃き出し窓と高窓が三つあり、換気性に秀でている。「高窓を付けたことで、踊り手は遠くを見られるようになり、振りも大きく表現できるようになった」と佐栄秀。
 コロナの感染拡大で「以前のようにお弟子さんに近づき、振りを直すことが少なくなった」と言うが、昨秋はここで猛稽古して、東京・国立劇場での公演を成功させた。弟子は二十七人。野村喜久江(82)は「外気が入って気持ちよく、稽古にも気合が入ります」。原則、予約制のマンツーマンの稽古で密にならない。弟子たちは「踊りの稽古でコロナストレスはありません」と口をそろえた。

◆ミニ寄席 寒くてもOK

風通しの良好な「墨亭」で行われた神田春陽の講談=東京都墨田区で

 一月の土曜日の昼下がり。墨田区東向島の商店街外れにあるミニ寄席「向(むこう)じま 墨亭(ぼくてい)」前では、客が開演を待っていた。お目当ては神田春陽(49)の連続講談「徳川天一坊(とくがわてんいちぼう)」。オープン時から月一回で読み継ぎ、この日が十八回目。
 近くに住む演芸評論家の瀧口雅仁(たきぐちまさひと)席亭(49)が、築六十余年の空き店舗を買い取り改装。二〇一九年五月に開場した。「うちは講釈が人気。お客さんが講談の面白さにも気付いてきた」
 地元に根付き、常連のファンも定着したところにコロナ禍。公演のチラシが配れないなど告知活動が難しくなった。密を避けるために、二十五人の定員だが、入場は十四人に減らした。「和室の窓を三方開け放った換気で安心感を持ってもらえる」と瀧口席亭。観客は「コロナ感染と換気による寒さなら、寒い方がいい」と一致。こぢんまりと手作り感の寄席は継続できている。
 小規模の空間だけに、若手の勉強会にもよく利用されている。「壁や座布団に向かって稽古しても始まらない」と瀧口席亭。二月は十公演を企画し、若手支援にも力を注いでいる。

◆能楽堂 ロビーが広く

風通しが良く開放感がある宝生能楽堂について説明する宝生会の牧野恒良事務局長=東京都文京区で

 昨春の緊急事態宣言の解除後、いち早く6月には公演を再開した能楽の宝生会。当初、地謡は覆面マスクを着けて5人程度に減らして登場していたが、現在はマウスシールドを装着し、互い違いに配置された7人が出演している。拠点の宝生能楽堂(東京都文京区)は、中庭を見渡せる広々としたロビーに陽光が差す。ドアや窓を開放すると風が吹き込む。公演時も二重の能楽堂の扉を交互に開放して換気を怠らない。
 定員490人のところ、コロナ対応で250人を上限にしている。宝生会の牧野恒良事務局長(50)は「能は上演する側も申し合わせ(リハーサル)が1回で済む。お客さまにも心静かに聴いていただける癒やしの芸能で、コロナ時代に適している」と説明する。
 同会は能楽界の中では動画配信も迅速に実施。「これからは生の舞台鑑賞と配信の2本立てで能の魅力を広めたい」。配信ならではの工夫を凝らした有料コンテンツは12本になり、能楽に縁のなかった若い世代のアクセスも増えているという。俳優や声優と共演する企画公演「夜能(やのう)」も人気だ。

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