<社説>女性蔑視発言の森喜朗氏 五輪の顔として適任か
2021年2月5日 07時53分
東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が、女性蔑視と受け取れる発言をした。謝罪会見で発言を撤回したが、大会の「顔」として適任なのか。疑問は解消されないままだ。
問題となったのは、競技団体での女性理事任用に関し「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる。誰かが手を挙げるとみんな発言したがる」とする発言だ。
森氏は会見で発言を撤回したものの、女性任用に後ろ向きの姿勢を重ねて示すなど、どこまで反省しているのか疑わしい。
森氏の発言は多くの女性を侮辱し、男女平等をうたう五輪憲章や世界の潮流に反する。憲章は冒頭に七つの根本原則を掲げ、人種や言語、宗教などと並び性別による差別を禁じている。
欧州各国や韓国では、一定割合の女性を任用する「クオータ制」が社会のさまざまな組織に導入され、一部では男女同数にする「パリテ」も進んでいる。
これに対し、スイスのシンクタンク「世界経済フォーラム」のまとめでは、男女の不平等を示す「ジェンダー・ギャップ指数」は百五十三カ国中、日本が百二十一位。特に政治と経済の分野で著しく低い。原因は国会議員や閣僚、会社の管理職の女性の少なさだ。森氏発言は図らずも、日本の遅れを世界に示したことになる。
さらに発言は、女性蔑視にとどまらず、開かれた場での議論を尊ぶ民主的なルールにも反する。
会議で参加者が意見を述べるのは当然だ。森氏発言の根底にあるのは、事前の根回し通りに事を進めたいとの思考だろう。
密室での打ち合わせは権力者の独善に陥りやすい。公開の場で多様な意見を出し合い、皆が納得するプロセスが大切、との現代社会の合意を軽んじている。
コロナ禍が深刻化する中、大会開催方針が硬直化しているように映るのも、独善的な運営に陥っているからではないか。
新型コロナウイルスの感染拡大で開催準備は困難になり、国民の大会への支持も落ち込んでいる。立場上、大会の「顔」である森氏の発言でさらに開催への支持が落ち込み、国内外の批判が高まることも予想される。
森氏のスポーツを愛する思いは分かるが、大会は単なるスポーツの祭典でなく平和や平等、友情や連帯など人類共通の価値観に貫かれた特別な存在だ。森氏は辞任を否定したが、会長は大会の意義を深く理解する人物であるべきだ。
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