幕引きの動きに怒りのうねり 森会長の辞任求める署名、8万3000件超
2021年2月6日 08時00分
東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)による女性蔑視発言は、謝罪会見後も批判が収まらず、5日には閣僚からも批判が相次いだ。ただ、政官財、スポーツ界など男性中心の日本社会に幅広い人脈を持つ森氏に、内部から辞任を求める声は上がらず、幕引きを図る動きも目立つ。ネット署名も立ち上がるなど市民の怒りのうねりは高まるばかりだ。(原田遼、奥野斐、清水俊介)
◆「思いもつかない」「不適切」…それでも「五輪成功に努力を」
平井卓也デジタル改革担当相は閣議後の記者会見で「私には思いつかない。認められるような発言ではない」と批判。萩生田光一文部科学相も「不適切な発言だ」と苦言を呈し、森氏が女性理事の積極登用を求める声に「文科省がうるさく言う」と言及したことに触れ「変革期には、うるさく言わなければいけない」と反論した。
それでも、辞任を求める声は上がらなかった。萩生田氏は「本人も反省している。五輪の成功に引き続き努力してほしい」と強調。加藤勝信官房長官は「辞任うんぬんは組織委で決めることだ。国際オリンピック委員会(IOC)は『この問題は終了と考えている』との見解を表明している」と話すにとどめた。
菅義偉首相は衆院予算委員会で、野党議員から「辞任を求めるべきだ」と迫られると、組織委が公益財団法人であることを挙げ「首相にその権限はない」と拒否した。
◆政治力のあるトップで五輪への財政支援狙う
森氏は2014年に下村博文五輪担当相(当時)に要請され、組織委の会長に就任した。下村氏は「スポーツ界、財界のほか国際的にも一番ネットワークを持っている」と理由を挙げていた。関連事業も含めて3兆円ともいわれる大会経費の確保には、官民からの多額の財政支援が必要で、政治力のあるトップの存在は不可欠だったとみられる。
約3000人の組織委職員も3分の1が国や東京都からの出向組で、幹部は財務省や外務省の官僚だ。組織委の元幹部は「森さんの目があるので、各省庁も下手な人材は送れず、優秀な官僚が集まった」と明かす。
組織委は公益財団法人で民間組織。政府や都が直接人事に介入する権限はない。会長を解任できるのは年に4回程度行われる理事会。理事には政財界に加え、作詞家の秋元康さんら著名人35人が名を連ねる。
◆「理事会はシャンシャン」解任動議ありえない
元幹部は「多くを占める外部理事は業務にタッチしていないので、理事会はいつもシャンシャン。森さんの解任動議が起こることはありえない」と語る。「開催が危うくなるほど批判を受ければ、周囲が辞任をうながすかもしれないが、できるのは菅首相とバッハ(IOC会長)さんくらいではないか」
対照的に、市民の怒りは収まらない。20代女性が中心の有志11人が4日夜、組織委などに森氏の処遇検討と再発防止を求めるネット署名を署名サイト「Change.org」で始め、開始から約1日で約8万3000人の賛同者が集まった(5日午後9時半現在)。
呼び掛け人の1人、一般社団法人「NOYOUTHNOJAPAN」代表で慶大4年の能條桃子さん(22)は、森氏の会見の様子を「『差別』だと指摘されている原因を理解しているようには見えなかった」と指摘。「社会全体として『仕方ない』では済まさないという姿勢を可視化したい。組織委などには森氏の処遇を話し合い、繰り返さないための対策を考え、実行してほしい」
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