福島の絵を描く神奈川の画家が埼玉で個展を開く理由は? 「コロナの今こそ命の大切さを感じて」<あの日から・福島原発事故10年>

2021年2月6日 14時00分

「作品から希望を感じてもらえたら」と話す山内若菜さん=神奈川県藤沢市で

 東京電力福島第一原発事故で被ばくした福島県内の牧場をテーマに作品を描き続ける神奈川県藤沢市の画家山内若菜さん(43)の個展「はじまりのはじまり」が6日、埼玉県東松山市の「原爆の図丸木美術館」で始まった。3月で原発事故から10年を迎えるのに合わせた企画。広島で原爆の爪痕を取材して制作した作品も並ぶ。「コロナ禍の今だからこそ、命の大切さを感じてほしい」と語る。(吉岡潤)

◆山内若菜さん「原爆の図丸木美術館」で4月10日まで

 山内さんは2013年に訪れた福島県浪江町で牧場主に出会ったのを機に「絵で声を上げよう」と考え、同町や同県飯舘村に通い始めた。牧場の仕事を手伝いながら、事故後に立てなくなり、弱り、死んでいく牛や馬、怒り、悲しむ牧場主らの姿を描くことで原発事故の現実を表現。福島県など国内に加え、ロシアでも個展を開き、横浜市や岡山市の中学校で1万人以上の生徒を前に講演し、作品に込めた思いを説いてきた。

出展作品の「刻の川 揺」(左)と「牧場 放」=埼玉県東松山市で(山内若菜さん提供)

 今回は32点を出展した。和紙に墨や絵の具を多層的に塗り重ねる手法による個性的な作品の数々。縦3.4メートル、横3.1メートルの「牧場 はなつ」は「悲劇の場所として見えなくなっていた自然の美しさを、色を放ち、死を放ち、怒りを放つことで浮かび上がらせた」という。昨年5月と9月には広島を訪れ、「原爆が落ちた国でなんで原発事故が起きたのか」と思案。過去を知っていく中で揺れる気持ちを縦4.5メートル、横3.4メートルの作品にまとめ、「ときの川 ゆれる」と名付けた。

◆広島と福島をつなぎ命、希望を描く

 福島の春夏秋冬、広島や長崎、ロシア・チェルノブイリに立つ福島の少女をイメージした作品も並ぶ。山内さんは「広島と福島の2つの扉を開けて、つなぐ展示にしたかった。そして見た人に未来の希望をもってほしいと考えた」と話す。
 会場の丸木美術館は、画家の丸木位里いりさん(1901―95)と丸木としさん(1912―2000)の夫妻が、原爆投下直後の広島を描いた連作「原爆の図」を常設展示している。山内さんが拠点とする藤沢市は、丸木夫妻がかつてアトリエを構え、「原爆の図」を制作した地という縁もある。
 山内さんの個展は4月10日まで。問い合わせは、丸木美術館=電0493(22)3266=へ。

おすすめ情報

東日本大震災・福島原発事故の新着

記事一覧