将棋の王位リーグ8日開幕 シード組棋士たちに意気込みを聞く

2021年2月7日 08時00分
 今期から名称を刷新した将棋の「お~いお茶杯第62期王位戦」(東京新聞主催、伊藤園特別協賛)の挑戦者決定リーグ(王位リーグ)が2月8日、開幕する。昨年、史上最年少で二冠となった藤井聡太王位(18)=棋聖=との7番勝負に進出するのは誰か。予選勝ち上がり組の戦いぶりを中心に取り上げた前回記事に続き、今回は前王位の木村一基九段(47)をはじめ、前期からのシード組の声を紹介する。

◆強豪ぞろいの紅組、羽生九段と20代5人の白組

 王位リーグは前期の成績上位者4人と、予選を勝ち上がった8人の計12人が紅白の2組に分かれ、それぞれ総当たりで対戦。各組の優勝者同士で決定戦を行い、勝者が挑戦者となる。同じくリーグ戦で挑戦者を決める王将戦と比べ、入れ替わる人数が多いのが特徴。過去には郷田真隆九段、広瀬章人八段、菅井竜也八段らが20代で王位を初獲得するなど、若手の飛躍の場となることも少なくない。
 今期の顔ぶれは紅組が木村九段、豊島将之竜王(30)=叡王、斎藤慎太郎八段(27)、佐藤天彦九段(33)、澤田真吾七段(29)、片上大輔七段(39)。白組が永瀬拓矢王座(28)、羽生善治九段(50)、佐々木大地五段(25)、長谷部浩平四段(26)、池永天志四段(27)、近藤誠也七段(24)。紅組は前王位とA級棋士3人という強豪がひしめく。白組は50代の羽生九段を20代の5人が取り囲むという構図。それぞれ特色の分かれた組み合わせになった。

◆調子上向く木村九段 「まずは勝ち越しを」

 「王位リーグらしく、勢いと実力のある人が入ってきた」と語るのは木村九段。中でも紅組のメンバーについて「昨年末に竜王を防衛した豊島竜王に、A級順位戦で名人挑戦をうかがう斎藤八段。やや調子を崩し気味だった佐藤九段は昨年末から調子を取り戻し、最近は振り飛車を多用しているところが不気味です。澤田七段は過去に挑戦者決定戦まで進んでいて、期するところがあるでしょう。渡辺明名人を破って初めてリーグ入りした片上七段も勢いがある。厳しいリーグになった」。まさに「解説名人」らしい丁寧な説明で分析してくれた。

昨夏の王位戦7番勝負では藤井聡太王位(右)の前に苦杯を喫した木村一基九段

 木村九段は昨年、順位戦でA級からB級1組に陥落し、王位を失冠するなど、不本意な1年だったといえる。ただ後半以降、NHK杯で藤井王位と永瀬王座という難敵を連破し、A級復帰を目指す順位戦では昇級レースを永瀬王座と争うなど、調子は上向きだ。「負け越しスタートだった順位戦で星を戻し、ほっとしたところはある。ただ、この年になると、好調を続けるのが難しい。ちょっと調子がいいと思っても、短期で終わってしまう」。そう課題を見据えた上で「(6人中)4人が陥落するので、3勝2敗ではダメと思って臨まないといけない。厳しい戦いだが、まずは勝ち越せるように頑張りたい」と意気込みを語った。

◆平常心の豊島竜王、初戦は木村九段

 紅組のもう1人のシード棋士が、第59期王位戦の覇者でもある豊島竜王だ。昨年末には竜王戦7番勝負で羽生九段の挑戦を退け、自身初のタイトル防衛を果たすなど、充実ぶりが目立つ。4回目の防衛戦で結果を出せたことで気持ちの変化があったかと思いきや、「あまり変わらず取り組んでいる」と平常心を強調する。

竜王を初防衛し、師匠の桐山清澄九段(左)とともに就位式に臨む豊島将之竜王(中)。(右)はバスケットボール解説者の佐々木クリスさん

 豊島竜王といえば、深い事前研究に裏打ちされた緻密な序盤戦術が持ち味。一発勝負のトーナメント戦では、当日の振り駒で先手後手を決めるのに対し、リーグ戦では事前にどちらが先手か分かる。違いについて尋ねると「確かに先後が決まっている方が準備はしやすい」との回答。「1局1局丁寧に指していきたい。まず初戦に向けて頑張ります」と決意を述べた。その初戦の相手は木村九段だ。一昨年の7番勝負で激戦を繰り広げた2人による好カードがいきなり実現する。19日に関西将棋会館で指される。

◆羽生九段「間違いなく相性の良い棋戦」

昨年10~12月、2年ぶりのタイトル戦となる竜王戦7番勝負に臨んだ羽生善治九段(日本将棋連盟提供)

 一方の白組では、タイトル通算100期の大記録がかかる羽生九段の戦いぶりに注目が集まる。王位獲得は最多の18期を誇り、初めて王位リーグ入りした1993年以降、1度もリーグから陥落したことがないという安定感は驚異的だ。20代の棋士5人と連戦する今期リーグについて、羽生九段は「タイトル保持者、若手の実力者、初顔合わせの人たちなど、多彩なメンバーとの対戦だと思った」と印象を語る。
 無冠になった2018年12月以降、タイトル戦の大舞台から遠ざかっていたが、50歳になった昨年、2年ぶりに竜王戦7番勝負に出場。1勝4敗で敗れたものの、トップ棋士としての存在感を示した。「竜王戦では途中で体調を崩し、関係者の皆さまにご迷惑をかけてしまい、気力も棋力もさらに充実させる必要を痛感しました」と課題を挙げつつ、王位戦については「今までを振り返れば、間違いなく相性の良い棋戦」と語る。「リーグ戦は1局ずつの価値が高い。しっかり指せればと思います」と決意表明した。

◆リーグ戦に強い永瀬王座も警戒感

 白組のもう1人のシード棋士は、前期の紅組リーグで全勝優勝し、白組優勝の藤井王位に挑戦者決定戦で敗れた永瀬王座。昨年は王将リーグも全勝で勝ち抜け、現在7番勝負を戦っている。リーグ戦での強さが際立つことには「リーグ戦の方が先後が決まっているので、準備がしやすい部分があると感じている」。

第70王将戦7番勝負の第3局に臨む永瀬王座。タイトル戦でもスーツ姿で臨むことが多い(日本将棋連盟提供)

 今期リーグでカギになりそうな1局を尋ねると、「どの対局も重要だと思っているが、羽生九段には勉強させていただくことがとても多いので、しっかりと準備して良い内容の将棋が指せれば」と、優勝候補同士の直接対決に照準を定めた。それ以外のメンバーも「若手の中でも特に勢いと実力のある方が集まった」と警戒感を強める。「とても注目していただける舞台ですので、今から対局が楽しみでなりません。自分らしさを盤上で表現したい」と闘志を燃やした。
 ほかにも白組では、いずれも18年にプロ入りした長谷部四段と池永四段の同期対決、小学生時代からしのぎを削ってきた佐々木五段と近藤七段のライバル対決など、好カードがめじろ押しとなっている
     ◇
 王位リーグは8日に東京・将棋会館で指される紅組の佐藤九段―片上七段戦を皮切りに進行し、5月ごろに挑戦者が決まる予定。藤井王位との7番勝負は6月29、30日に名古屋市で開幕、全国を転戦する。

待ち受ける藤井聡太王位

 樋口薫(ひぐち・かおる) 東京新聞文化芸能部で囲碁・将棋を担当。「バン記者・樋口薫の棋界見て歩き」を毎月連載。著書に、木村一基九段の史上最年長での初タイトル獲得までの道のりを追った『受け師の道 百折不撓の棋士・木村一基』(東京新聞)がある。

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