「ハンコレス」のはずが…愛知県庁、ゴム印も可 公費で購入の部署も

2021年2月8日 06時00分

「押印を廃止」、「ゴム印等でも可」と矛盾した言葉が並ぶ文書

 新型コロナウイルスの感染拡大防止やデジタル時代を見据え、行政手続きや内部文書の押印廃止が進む官公庁。そうした中、愛知県庁職員から「庁内の一部文書で押印廃止に伴い、ゴム印を使うようになりました。公費で買おうとしている部署もあり、お役所以外では理解不能だと思います」との声が取材班に寄せられた。確かに本来の廃止の趣旨からすれば意味不明のような…。早速、庁内の文書管理を担当する法務文書課に聞いてみた。(石井宏樹)
 ゴム印が使われるようになったのは「余白起案」と呼ばれる内部文書だ。庁内外からの問い合わせに返答する際、上司の了解を得るため、問い合わせ内容の余白に返答案を記載したもの。昨年末までは作成者が押印する決まりだったが、元日施行の新しい文書規定で氏名のサインに変更。サインは自署だけでなく「ゴム印等でも可」とされた。
 同課によると「重要度が低い場合に使う例外的な形式」だが、投稿者は「役所は何でも文書で残す文化で日常的に作成されている。自署になれば面倒と思う人が多い」と、ゴム印OKの理由を推察する。印鑑の継続使用については「同姓の間違いを防ぐため(サインのように)氏名両方が必要で、認められない」(同課)という。

法務文書課への取材をもとに作成した「余白起案」のイメージ

 投稿者によると、一部の部署では「ゴム印は仕事にしか使わない」として、文具予算からのゴム印作成費の捻出が検討されている。法務文書課は「予算からゴム印を作る動きは想定していなかった。しかし、現場が決めるなら止めることもできない」と困惑する。
 そもそも押印廃止は菅義偉首相の看板政策、デジタル化推進の一環として政府が地方自治体にも強く求めてきた。愛知県の大村秀章知事も素早く廃止を表明。県民や事業者が押印を求められる6141種類の手続きのうち、国の法令が定めるものを除く4760種類を対象に今年から押印を廃止した。余白起案などの内部文書も「ハンコレス」が進み、全体の半数ほどだった電子決裁の比率が7割まで高まった。
 名城大の昇秀樹教授(地方自治論)は「業務効率化のための押印廃止という手段が目的化し、公費でゴム印購入というおかしな結論になっている。効率化のために従来のやり方が良いのであれば、無理に変える必要はないのではないか」と話していた。
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