<新型コロナ>透析患者、感染で死亡リスク大 「在宅」普及には高い壁

2021年2月8日 06時00分
 新型コロナウイルス感染症が広がる中、慢性腎不全のため人工透析が必要な透析患者は、コロナに感染した場合の死亡率が11.7%で、国内全体の死亡率が1%ほどなのと比べ、極めて高くなっている。感染リスクを減らす選択肢として、自宅で患者が透析を行う「在宅血液透析」が注目されるが、普及にはコスト面などが壁になる。透析患者の9割以上が施設へ通院し、人との接触による感染リスクを抱えながら、週3回、4時間前後の血液透析を続けている。(増井のぞみ)

 透析患者  日本透析医学会によると、2019年末現在、全国の透析患者数は約34万人。通院や入院施設での血液透析は96.9%の約33万人、在宅血液透析は0.2%の約800人となっている。ほかに、おなかに埋め込んだチューブを使い自宅で行う腹膜透析が、血液透析との併用を含め2.9%の約1万人いる。

 東京都世田谷区の印刷業、長沼世紀せいきさん(71)は1月下旬、自宅地下の仕事部屋で在宅血液透析を行っていた。「通院に比べコロナにかかるリスクは低い。家なので精神的に楽」。左腕の2カ所に刺した針から延びたチューブを血液がいきおいよく流れる。血液は、老廃物や余分な水を取り除く機械を通り体に戻る。

自宅で仕事机に向かいながら、自分で人工透析を行う長沼世紀さん=東京都世田谷区で

 「家で仕事しながら透析したい」と3年前、在宅血液透析に切り替えた。自分で腕に針を刺し、針を抜いて止血するといった医療行為をかかりつけ医で半年トレーニングして習得した。
 現在、自宅で週5回、5時間ずつ透析する。通院は週3回から、血液検査などのための月2回に減った。
 かかりつけ医「腎内科クリニック世田谷」の菅沼信也院長は「在宅血液透析は、自分で腕に針を刺す『穿刺せんし』が最大のハードルだが、感染症のリスクを減らせる。自分のペースで長時間透析できるので健康寿命も延ばせる」と意義を語る。

◆介助者の存在や設備投資に難

 ただ、在宅血液透析は、事故に備え介助者がいることが条件。長沼さんは体調が悪い時には妻(73)に手伝ってもらう。
 透析機械や透析液の備蓄の重さは計約600キロと軽乗用車並みで、家の強度が問題となる。特殊な機械のため、長沼さんは設置の際、水道や電気工事で約10万円支払った。さらに、透析のための水道と電気代は月に計2万円以上かかる。こうした事情で、日本透析医学会によると、在宅血液透析は、透析患者の0.2%にとどまる。
 同学会などによると、今月4日現在で透析患者1047人が新型コロナに感染し、122人が死亡している。進行した腎不全は、新型コロナの重症化要因とみられる。

◆原則入院も医療逼迫でできないことも

 厚生労働省は、透析患者がコロナに感染したら原則入院としている。しかし医療機関の逼迫ひっぱくで、東京など都市部の透析患者がすぐに入院できない事例が相次ぐ。東京や千葉、熊本などの透析施設ではクラスター(感染者集団)も出ている。
 患者団体「全国腎臓病協議会」の金子さとる事務局長(63)は「コロナ禍でも透析は中断できず、多くの人は公共交通や院内で感染する不安を抱えて通院している。透析患者がコロナに感染した場合は、すぐ入院できる体制を国と都道府県、専門病院が連携して維持してほしい」と求める。

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