鳥との「社会的距離」 都市近郊で生態調査研究 千葉県市川市・唐沢孝一さん

2020年5月12日 02時00分

新著を手に「同じ種類の鳥でも、都心、郊外、農村など場所によって人との距離感は変わります」と話す唐沢さん=千葉県市川市で

 大気汚染や水質汚濁がひどかった四十年ほど前の東京で「なぜ鳥が繁殖するのか」という疑問を抱き、「都市鳥」研究を始めた本紙読者の唐沢孝一さん(76)=千葉県市川市。「人と鳥にもソーシャルディスタンス(社会的距離)がある」と言います。 (小形佳奈)
 社会的距離と言っても、感染症対策で物理的距離を空けるのとは異なります。例えばスズメ。イネを食べるために人間から害鳥とみなされ、かかしや鳴子などで脅されてきました。「米粒などをまくと寄っては来ますが、こちらから近づくとパッと逃げるでしょう」と唐沢さん。逆に農作物につく虫を食べるツバメは益鳥として扱われ、人間との距離感が近いことから、都会の軒先にも巣を作るのだとか。
 唐沢さんが、人と鳥の関わり合いが両者の距離感を決めていると気付いたのは、東京都立両国高校で生物を教えていた一九七〇年代の終わり。工場の煙や車の排ガスで空気が汚れ、生活排水の流れ込む川は異臭を放っていたといいます。
 山野で繁殖するはずのヒヨドリが高校の中庭で繁殖するのを見て「なぜこんな環境で」と驚き、観察と考察を重ねました。
 環境保護の高まりから人々にとって「野鳥は捕まえて飼ったり、食べたりするものから見てめでる対象に。天敵もいない都会は野鳥にとってすみやすい場所になっていた」と気付いたそうです。
 八二年に「都市鳥研究会」を設立し、都市や近郊に暮らす鳥の調査研究がライフワークになりました。今年三月、都会のカラスから水辺のカワセミまで三十種類の鳥の食生活について捕食の決定的瞬間の写真などを交えて紹介する「身近な鳥のすごい食生活」(イースト新書Q)を出版しました。
 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、観察会は中止が続いています。一方で、唐沢さんが人・自然・野鳥などの情報交換の場として立ち上げたインターネットの掲示板には「練馬区の公園でカイツブリが孵化(ふか)」「マンションのベランダにかけた巣箱にシジュウカラが入った」といった情報が投稿されています。
 「遠くに出掛けられない今こそ、身近な自然に目を向けてほしい」と唐沢さんは話しています。掲示板はhttp://www.zkk.ne.jp/karasawa/bbs1/imgbbs.cgi

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