中小企業がSDGsに取り組む意義とは 識者に聞く

2021年2月9日 06時00分
 SDGs(持続可能な開発目標)を意識した企業経営が注目されている。ただ現状の取り組みは大手企業が中心だ。こうした中で、SDGsビジネス総合研究所の村井哲之理事長は「会社の目標づくりの参考にできる」、日本ノハム協会の神田尚子代表理事は「付加価値を生むきっかけになる」と指摘し、中小企業が取り組む意義を強調する。 (畑間香織)

「SDGsは持続可能な企業に変革する道具」と語るSDGsビジネス総合研究所の村井哲之理事長=東京都中央区で

◆「世の中に新たな価値を」 村井哲之氏

 ―著書の中で、SDGsを「世界規模のうさんくさいもの」と述べ、目標は達成できないとしています。
 「世界の賢い人たちが、どうすれば地球を持続可能にできるのかを考えたのが17の目標で、世界益を書いている。だが、実際は(各国が)国益で動くから達成できません。例えば、日本は2018年の先進7カ国(G7)サミットで(海のプラスチックごみの削減数値を盛り込んだ)海洋プラスチック憲章に署名せず、核兵器禁止条約も批准していない」
 ―それでも企業が取り組む必要はあるのですか。
 「SDGsは素晴らしい未来の形を示しています。17の目標は世界の社会課題をわかりやすく教えてくれた。企業は自分たちの目標をつくる参考にできます」
 ―CSR(企業の社会的責任)の活動と、SDGsはどう違うのでしょう。
 「社員のボランティアといったCSRの活動は、会社の利益を目的にしていません。社会貢献はカネにならないと考える人が多いですが、社会問題を解決することが会社の利益になると考えるのがSDGsです」
 ―これから取り組む中小企業に伝えたいことは。
 「社会課題に取り組まないと企業は生き残れない。自社の強みを生かして、新たな価値を世の中に与えられる可能性を持っていることに気付いてほしいです」

 むらい・てつゆき 1957年、山口県生まれ。リクルート、環境経営戦略総研の社長を経て、2019年から一般社団法人SDGsビジネス総合研究所理事長。著書に「SDGsの正体―メディア報道ではわからない真の目的とは」(PHP研究所)。


「中小企業がSDGsに取り組むことで人材が集まり成長する」と話す一般社団法人日本ノハム協会の神田尚子代表理事=東京都千代田区で

◆「SDGsを武器に新事業を」 神田尚子氏

 ―日本ノハム協会を設立した目的は。
 「ノハムは英語で『No Harm(ノーハーム)』、(環境などに)無害という意味です。協会を設立したのは、多くの企業が自分たちにSDGsは関係ないと考えていますが、経済成長や社会に貢献できることを知ってほしいからです。SDGsを経営に取り入れることで、持続可能で、無害な未来の実現を目指すことができます」
 ―中小企業がSDGsに取り組む利点は。
 「中小企業は社長が『やる』と言えば、すぐに会社全体で行動を起こす早さがあります。これからの会社の価値は規模よりも、社会をいかに良くできるかで決まるようになります。持続可能な商品を開発することは、新たな付加価値を生むチャンスです」
 ―昨夏、SDGsを意識したレストラン「Noeud・TOKYO(ヌー・トウキョウ)」を東京・永田町駅近くに開店しました。
 「内装に間伐材を利用し、食材を無駄にしないため完全予約制です。お客さんがSDGsを感じられる場にしたいと考えています」
 ―中小企業への期待は。
 「小学生が授業でSDGsを学び始め、(世界は)環境などに配慮した商品を買うエシカル(倫理的)消費に移ります。SDGsを武器に(変化に応じた)新事業を興してほしいです」

 かんだ・なおこ 1966年、大阪市生まれ。結婚式などを手掛けるタガヤ(京都市)に入社し2012年に社長に就任。20年に一般社団法人日本ノハム協会(同)を設立した。著書に「最先端のSDGs『ノハム』こそが中小企業の苦境を救う」(サンクチュアリ出版)。

◇             ◇
 本紙は、SDGsに積極的に取り組む首都圏の中小企業を紹介する企画「都の企業とSDGs」を、随時掲載しています。

関連キーワード


おすすめ情報

経済の新着

記事一覧